奥さまが新車で購入した1977年式フェアレディZ
2024年10月12日~13日にかけて開催されたイベント「第2回Swap & Meet in 妙高」は、日本ではまだ少数派の「リゾート滞在型イベント」を標榜し、家族連れでも楽しめるようにさまざまな趣向を凝らしたユニークなイベント。今回も会場には古今東西のバラエティ豊かなクルマが集まった中から、洪水によって一度は水没しながら、15年かけて路上復帰したという日産初代S31型「フェアレディZ」を紹介します。
初代S30系の最終型、S31型のフェアレディZ-T
戦前から文化人や富裕層の集う高原リゾート地として知られた新潟県の妙高・赤倉温泉エリア。その赤倉スキー場で開催されたイベントが「第2回Swap & Meet in 妙高」だ。戦前の欧州車から昭和の国産車まで、多くの参加車両が展示された「第2回Swap & Meet in 妙高」の会場内で見かけたのがこちらの日産初代「フェアレディZ」。
先代のダットサン「フェアレディ」が欧州のライトウェイト・スポーツに範を取ったラダーフレームにオープンボディを仮装した古典的スポーツカーだったのに対し、新型フェアレディはモノコックにテールゲートを備えたクローズド・ボディが採用され、GT的性格を強めた新時代のスポーツカーとして1969年にデビューした。この代から車名には究極を意味する「Z」の1文字が加えられ、フェアレディZと名乗るようになった。
「初代」フェアレディZはS30系の型式番号で知られるが、こちらのZは1977年式で初代の最終型となる「S31」。Z-Tと呼ばれる上級グレードだ。
2004年の「新潟県三条市水害」で窓の上まで水没……
「じつはこのZはもともと妻のクルマなんですよ」
と教えてくれたのはオーナーの羽賀義憲さん。同じ新潟県内の三条市からエントリー。まだ羽賀さんが結婚する前、奥さまが新車で購入して以来ずっと身近にあるという。
「結婚した時点で、走行距離は3万kmくらいでしたかね。今のオドメーターの距離は4万1400kmくらいです」
結婚後の走行距離がさほど伸びていないのには理由がある。2004年7月に起きた豪雨災害「新潟県三条市水害」。この時の洪水で、羽賀さんのフェアレディZは水に浸かってしまったのだ。当時の写真も見せていただいたが、窓の上まで水没した跡。
「普通に考えれば廃車ですよね。Z以外の他のクルマはそうなりました」
水没から15年を経て復活!
しかし奥様が新車で購入して以来ずっと乗り続けてきたワンオーナー車だ。羽賀さんはこのZのレストアを決意する。
「排ガス規制で牙を抜かれた時代のZではありますが、なんとか路上復帰させたい、と」
その後、時間をかけて少しずつレストアを進めた羽賀さん。仕上がった暁には奥さまや娘さんも乗りやすいようにと、電動のパワーステアリングを追加した以外は極力オリジナル状態を目指し、そのレストアが仕上がったのはつい最近のこと。じつに水没から15年の時間が過ぎていた。
奥さまと娘さんの反応は?
じつは羽賀さんの趣味のクルマは20年以上の付き合いとなる1989年式のBMW「635CSi」。こちらでも各地のイベントやツーリングに出かけるとのこと。ではそんな時は奥さまや娘さんがこのZで一緒に?
「いや、妻も娘もこのZにはあまり乗ってくれなくて……」
と苦笑いの羽賀さん。しっかり者の女性にとっては、モノと思い出はきっちり分けて考えられるのかもしれない。
ともあれ、長い時間をかけてついに路上復帰を果たした水害サバイバー、羽賀さんのフェアレディZに幸多かれ。
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