英国のオークションに登場した、フランスのレア車アルピーヌ
2024年9月、英国の名門「ボナムズ」社が開催した「The Beaulieu Sale Collectors’ Motor Cars & Automobilia 2024」オークション。そこに登場したのは、かつて日本でもかなりの人気を得ていたルノー「アルピーヌ V6ターボ」のスペシャルバージョンです。車両の詳細とオークション結果についてお伝えします。
ポルシェ911に本気で対抗することを夢見た高性能GT、アルピーヌGTAとは?
ルノー「アルピーヌ GTA(Grand Tourisme Alpine)」は、1970年代初頭から1980年代前半までアルピーヌを支えてきた「A310」に替わるアルピーヌ・ブランドのスポーツカーとして、自然吸気版は1984年11月、ターボ版は1985年2月にデビューした。
鋼管製バックボーンフレーム+FRP製クーペボディ、リアエンジンのレイアウトなど基本的な構成は、アルピーヌの創業時代からの伝統に即したもので、前後ダブルウィッシュボーン式サスペンションは「A110」後期およびA310から受け継がれていた。
ボディはルノー「5ターボ」などを手がけたことでも知られるルノー所属のスタイリスト、イヴ・レガルがデザインワークを担当したといわれ、生産化に至る外装のエンジニアリングはフランスを代表するコーチビルダー、ユーリエ社が主導したとのこと。フラッシュサーフェス化が徹底され、自然吸気版のCd値は0.28という優秀な値をマークした。
いっぽう先鋭的なインテリアデザインは、この時代ルノーとの関係を深めていたイタリアの巨匠マルチェッロ・ガンディーニが担当。豪奢な本革張りのシートが用意されるなど高級化が図られていたのも特徴で、性能面以外のさまざまな要素で、それまでアルピーヌが目指していたポルシェ「911」の真のライバルとなり得る資質を備えていた。
最終的な生産台数は325台
パワーユニットは、A310後期型から継承されたバンク角90度のV型6気筒SOHC「PRV」エンジン。自然吸気2849ccのほかに、ターボチャージャーを装着した2458ccが用意されていた。ターボ版のみが正規導入された日本市場では、商標権の関係から「GTA」の名を使用することなく、ルノー「アルピーヌ V6ターボ」として販売されることになった。
そして1991年には、後継車の「A610ターボ」へと代替わりを果たすのだが、その直前の1990年2月には、よりアグレッシブなワイドボディキットとBBSスタイルの3ピースホイールを装備した限定モデル「V6ターボ ル・マン」が登場する。
スタンダードのV6 GTとV6ターボは1990年中に生産を終了したかたわら、「ル・マン」バージョンは1991年2月まで生産され、最終的には325台が南仏ディエップのアルピーヌ工場からラインオフしたといわれている。
いまなら比較的リーズナブルだけど、いずれは高騰の兆しも……?
このほど、ボナムズ「The Beaulieu Sale Collectors’ Motor Cars & Automobilia2024」オークションに出品されたアルピーヌ V6(GTA)ターボ ル・マンは、わずか325台が製造されたなかでもさらに希少な右ハンドル仕様車。英国マーケット向けに用意された26台のうちの24番目とされる。
過去に4人のオーナーのもとを渡り歩き、今回は最後のオーナーの未亡人によって売りに出されることになったとのことである。
オークションの公式カタログ作成時点での走行距離は、生産から34年を経ていることを思えば少なめな、2万5000マイル(約4万km)足らず。2019年に改修が行われ、ギアボックスのリビルドを行ったほか、サスペンションブッシュが新品に取り換えられるなど、3379ポンドをかけて大規模な整備が行われたという。
また、同じ年にはバッテリーを新品に取り換えており、これまでのヒストリーファイル、オリジナルのハンドブック、英国内の登録履歴を列記した「V5C」ドキュメントとともにオークションに出品されていた。
ボナムズ社の営業部門では、今回のオークション出品にあたって2万5000ポンド~4万5000ポンドというエスティメート(推定落札価格)を設定した。そして実際の競売では3万2200ポンド、現在のレートで日本円に換算すれば、約620万円で競売人のハンマーが鳴らされることになったのだ。
今回のハンマープライスは、ここ数年のアルピーヌ V6ターボ ル・マンの販売実績から比較すると、少々高めと思われる。希少車ゆえに、オークションでの落札事例も非常に少ないのだが、たしかに高騰傾向にあるのは間違いないようだ。
かつては非常に安価だったはずのスタンダードV6ターボでさえ、国際マーケットではジリジリと価格高騰し、その余波としてバブル時代にけっこうな数が輸入された日本からも流出している現状から判断すると、この一連のファミリーも、いずれはかなりの高価格モデルになるのかもしれない……?