妻を迎えにアリススプリングス空港を目指す
オーストラリア・ノーザンテリトリー州でトヨタ「ハイラックス」ベースのキャンピングカー、アポロ「キャンパーバン」をレンタルして、釣り人としてバラマンディの大物を狙う23日間の旅をレポート。仲間とフィッシングを満喫するという旅の前半は終了し、次の1週間はノーザンテリトリーの国立公園を一人旅。ダリー・リバーで伝説的なバラマンディ釣りのガイド、ペリー氏と過ごしてから、さらに南下します。
オーストラリアが抱えている先住民問題
あまりに居心地がよく、ペリーズ(Perry’s)に3泊もしてしまった。2日後、妻をピックアップするアリススプリングス空港(ノーザンテリトリー州の南部、オーストラリアのほぼ中央)まで、まだ1500km以上ある。果たして、間に合うのか?
この日の宿泊地は、キャサリンという町の予定だった。ここは、当初、訪れるつもりだったニトミルク国立公園のエントランスシティだ。日程の関係でニトミルクには行けなくなったが、雰囲気だけでも味わいたい。正直なところ、そろそろレストランの食事も恋しくなっていた。
ところが、町に入った途端、嫌な空気が……。
先住民であるアボリジニーに関する社会問題は、オーストラリア人の友人から聞いていた。政府が金や家、クルマを与えるため働く気が失せ、酒やドラッグに溺れる人が多いというのだ。そうなると、当然、犯罪やトラブルも多くなる。
キャサリンの町を歩いているのは、白人とアボリジニーが半々くらいだった。アボリジニーの多くは裸足で服装も汚く、路上で煙草を吸っている。歩道に座り込んでいる人も少なくない。コンビニで買い物をすると、白人の若い女性店員がにこやかに対応してくれるが、その横に酩酊したアボリジニが煙草をくわえて何やら怒鳴っている。こういう状況を若い女性は、どう受け入れているのだろう?
ガソリンスタンドで他人の先払い分を「横取り」
こんなこともあった。ペリーズを出て、町に唯一のガソリンスタンドに寄った。ポンプ(給油機)が3台あったので、ぼくは一番奥のディーゼル用にクルマを停めた。クルマを降りると、「アポロ号」の後ろにピタリと「プラド」がついた。運転席を見ると、若いアボリジニーだった。
ぼくは窓を上げて鍵をかけ、ドアノブを引いて施錠したことをアピールした。そして、「先払い」という張り紙があったので、ショップのなかへと入った。後ろのクルマから母親らしい女性が降りて、やはり店内に入ってきた。
ぼくは、「ディーゼル20ドル」といってクレジットカードで支払いをした。そして、外で給油を始めようとしたが、燃料が出てこない。ガチャガチャやっていると、店の親父が出てきて、「1番といっただろう」と大きな声でいう。ポンプを見ると3番だった。ぼくは間違いに気づいてクルマを回し、プラドの後ろにつけた。
若い男が1番で給油を終えて出ていった。ぼくはクルマを前に出して、1番で給油しようとした。すると、店の親父がまた出てきた。
「先に払ってくれよ」という。
「さっき払ったよ」
「え!? 20ドルか?」
「20ドルだよ」
「ちきしょう、やられた!」
つまり母親は金を払わず、
きれいな泉の湧き出すキャンプ場でリラックス
目的地は、キャサリンから100km南のマタランカにあるビタースプリングス・キャンプ場に変更した。エルゼイ国立公園のなかにあるキャンプ場で、キャロル(ペリー氏の奥さん)のおすすめだった。到着すると、キャンプ場は家族連れでにぎわっていて、ぼくがチェックインしたときには、大きなキャンプ場なのに、
ビタースプリングスとは、文字どおり自然に湧き出す泉で、行ってみるとたくさんの人が水着で水泳(水浴び?)を楽しんでいた。水は冷たく、思いのほか、深い。小さい魚が一緒に泳いでいて、みんなリラックスしていた。
もう午後4時過ぎだったので、適当に水浴びを済ませてサイトに戻った。夕食を食べていると、今度は向かいのサイトからジャスティンという長身の男性が歩いてきた。シドニーの北の町に住んでいて、趣味は釣りや素潜りだという。
「ロブスターやアワビがたくさん取れるんだ。アワビをガーリックバターで焼いて食べると最高だよ!」
「うわ、たまらない!」
と、ぼくも応じた。
アポロ号の冷蔵庫は空になり、ぼくは最後のソーセージ2本をフライパンで焼いていた。日本にも行ってみたいというので、
「日本ではロブスターやアワビを採るのは違法だからダメですよ」
と釘を刺した。
翌日は1日で1000キロ走破を予定……
同じ年齢であることも分かって話が盛り上がったが、ある瞬間にジャスティンの顔色がさっと変わった。それは、ぼくが「明日はアリススプリングスまで走る」と言ったときだった。
「1000km以上あるよ。やめたほうがいい。どこかで1泊したら?」
と、繰り返し勧められた。しかし、妻を迎えに行くためには、どうしても明日のうちにアリススプリングスに着いておきたい。すでに、Airbnbも予約していた。
「そうか、仕方ないな。くれぐれも気をつけて」
そう言ってジャスティンは自分のサイトに戻った。たしかに1000kmは遠い。明日のロングドライブに備えて、いつもより早くベッドに入った。
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