21世紀のアストンマーティンのトレンドセッター
2024年9月、英国の名門「ボナムズ」社が開いた「The Beaulieu Sale Collectors’ Motor Cars & Automobilia 2024」オークション。今回はその出品車両のなかから、アストンマーティンの歴史を変えた21世紀初頭の快作「V12ヴァンキッシュ」を取り上げます。
アストンマーティンの歴史を変えた名作、V12ヴァンキッシュとは?
アストンマーティン「V12ヴァンキッシュ」は、1998年のジュネーヴ・ショーにおいて参考出品されたコンセプトカー「プロジェクト ヴァンテージ」から発展。2001年からアストンの新たな旗艦として正式生産に入ったスーパースポーツである。
長らくアストンマーティン各モデルのシャシーを担ってきた「VHプラットフォーム」の原型ともいうべき、アルミ合金+カーボンファイバー混成のスペースフレームに、イアン・カラム氏のデザインによるアルミボディを架装。460psを発揮する6L V12エンジンと6速シーケンシャルMTからなるパワートレインにより、300km/h超級の走行性能を発揮する、アストンマーティンとしては史上初となる近代的スーパーカーだった。
そして、2002年公開の映画『007/ダイ・アナザー・デイ』にて、ピアース・ブロスナンが乗る「ボンドカー」となったことでも知られるこのモデルの大成功によって、アストンは第3の黄金期を迎えたことから、同社の「マイルストーン」的傑作とも称される。
100台に満たなかったSDP装着車両
このほど、ボナムズ「The Beaulieu Sale Collectors’ Motor Cars & Automobilia2024」オークションに出品されたV12ヴァンキッシュは、欧州マーケット向きに94台しか製作されなかったという「スポーツ・ダイナミック・パック(SDP)」装着車のひとつ。標準車からの主な変更点は、シャシーとサスペンション、ブレーキである。
フロントのアップライトとホイールアッセンブリは、車高を5mm下げる短いスプリングと改良されたダンパーによって、より強く、よりハードになった。くわえて、ステアリングはより高いギア比を持ち、スタンダードよりも20%クイックになった。
また、フロントのブレーキディスクのローターはφ378mmに拡大され、キャリパーは4ポットから6ポットに変更されたが、SDP搭載車を見分ける最も簡単な方法は、軽量9本スポークホイールと楕円溝パターンのブレーキディスクである。
SDPヴァンキッシュは、V12ヴァンキッシュSに取って代わられるまでの数カ月間しか販売されず、製作台数も100台に満たなかった。