フランス本国生産のシトロエン DS
この時代のシトロエンは英国ロンドン近郊スラウにも工場を設けて、大規模な生産を行っていた。しかし、このほどボナムズ「The Beaulieu Sale Collectors’ Motor Cars & Automobilia2024」オークションに出品されたDS20 パラスは、2000年代初頭にフランスから英国に輸入されたもので、良好なメンテナンス履歴が残された1台である。
ハイドロニューマティックを利用したセミオートマチック・トランスミッション「Cマティック」+左ハンドル仕様のシトロエン DS20パラスは、「グリ・パラディウム」と名づけられたグレーに「タバク(タバコ色)」の本革インテリアという、とてもクラシックでエレガント、そしていかにもフランス高級車的なカラーコンビネーションで仕上げられている。
また、1970年以降の全面に樹脂製ソフトパッドを巻いた純正ステアリングホイールは、同じシングルスポークでも、よりエレガントな1970年以前の純正品に交換されている。
今回の出品者でもある現オーナーが4年にわたって所有する間に、このDS20は愛情を込めてメンテナンスされ、1万5000ポンド以上に相当する整備をシトロエンのスペシャリストに依頼したとのこと。その際の請求書は、ドキュメントファイルとして車両に添付されている。その成果をアピールするためか、2023年にはまったく問題なく英国とフランスをツーリングしたという報告が添えられていた。
メーターは1周している可能性が高い
また、イギリスに輸入されてからの車両履歴は添付された「V5C」ドキュメントに記されているものの、それ以前のヒストリーは不明。オドメーターは約5万9000kmを示しているが、少なくとも1周は「時計回り」をしている可能性が高いとのことである。
ボナムズ社の公式オークションカタログでは、あちこちに小さな瑕疵があることを正直に認めているいっぽうで「素直なクルマで、見た目も乗り心地もよく、走りも美しい。魅力的なカラーコンビネーションを誇る素敵な例は、幸運な次のオーナーに何年もドライビングを楽しんでいただけることでしょう」と主張。そして2万ポンド~3万ポンド(邦貨換算約380万円〜約570万円)という、昨今の市況におけるこのモデルとしては比較的リーズナブルなエスティメート(推定落札価格)を設定した。
ところが当日の競売では、売り主およびオークショネア側が予測していた以上にビッド(入札)が伸びなかったようで、結局リザーヴ(最低落札価格)にも届くことなく流札。オークション終了後は、ボナムズ社営業部門によって継続販売とされているようだ。