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1000万円でフェラーリ泥沼生活!「365GT4 2+2」は覚悟がなければ手を出すべからず…とはいえV12跳ね馬オーナーへ最安値で実現できるクルマです

1000万円でフェラーリ泥沼生活!「365GT4 2+2」は覚悟がなければ手を出すべからず…とはいえV12跳ね馬オーナーへ最安値で実現できるクルマです

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2024 Courtesy of RM Sotheby's

非常にオリジナルなコンディションを保っている

2024年10月初旬、「Hershey 2024」オークションに出品されたフェラーリ365GT4 2+2は、シャシーナンバー「17235」。フェラーリのヒストリアンとして知られるジャレット・ロスマイヤー氏のレポートによると、もともとミラノの有名なフェラーリ正規ディーラー「M.ガストーネ・クレパルディ・アウトモビリS.A.S.」を介して、ファーストオーナーであるイタリアのベゲット氏に販売されたとのことである。

1970年代後半にはアメリカに渡り、1979年末から1980年初頭にかけて、カリフォルニア州アナハイム周辺に在住する、匿名の売主によって売りに出された。

そこからの記録は明らかにされていないが、それから数年間は故テレンス・E・アデレー氏によって使用されたのち、少なくとも数年前までは彼のもとで静態保存されていたと目される。

速度計内のオドメーターは、オークション公式カタログ作成の時点で6万3031kmを記録しており、ボディやタン革レザーの内装を含め、走行距離相応の適度なヤレ感とともに、非常にオリジナルなコンディションを保っているようである。

出品者側からすれば不本意だったに違いない落札価格?

このフェラーリ365GT4 2+2について、RMサザビーズ欧州本社は7万5000ドル~10万ドル(当時のレートで1110万円〜1480万円)という、このモデルの相場価格および写真で見る限りのコンディションからしても、かなり強気のエスティメート(推定落札価格)を設定するとともに、この出品ロットについては「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」で行うことを決定した。

この「リザーヴなし」という出品スタイルは、確実に落札されることから会場の購買意欲が盛り上がり、エスティメートを超える勢いでビッド(入札)が進むこともあるのがメリット。しかしそのいっぽうで、たとえ出品者の意にそぐわない安値であっても落札されてしまう落とし穴もある。

そしてこの日のオークションでは、リスクを冒したことが裏目に出てしまったようで、競売が終わってみればエスティメート下限を下回る6万8750ドル、日本円に換算すれば約1030万円という、出品者側からすれば不本意だったに違いない落札価格で、競売人のハンマーが鳴らされることになったのだ。

ちなみに同じく2024年の夏、英国バークシャーで開催されたRMサザビーズ「Cliveden 2024」オークションに出品されたフェラーリ365GT4 2+2が3万6800英ポンド、日本円に換算すれば約730万円で落札されたばかり。やはり英国でもアメリカでも、このあたりが現在の相場感ということなのだろう。

もういちど断言する。覚悟なき者は手を伸ばすべからず!

フェラーリ365GT4 2+2はこのAMWオークションレビューでも常連中の常連。担当編集君の好みなのか、なぜか年がら年中登場している感があり、そのたびに筆者は口を酸っぱくして訴えてきているのだが、とにかくこのモデルや後継の400、あるいは412に至るまで、一部の国内ウェブメディアが無責任に煽るごとき「リーズナブルな」あるいは「安いから買っておこうか?」なんてクルマでは絶対にないことを、ここに今いちど断言しておきたい。

また、当のRMサザビーズのウェブカタログでさえも「新車時と同様“2+2”のための快適で楽しい移動手段となるだろう」などという楽観的かつお気楽なフレーズが謳われているが、それはあくまで絶好調のとき限定のこと。もっと古い世代のV12フェラーリと同等、あるいは電気系や油圧系システムが1960年代のフェラーリよりも複雑になった分だけ、余計に手がかかることを覚悟せねばなるまい。

フェラーリらしく走ることのできるコンディションを保つためには絶対的な資金力と広くて強いコネクション、そしてなにより熱意が問われる。

クラシックV12フェラーリは、すべてそういうクルマなのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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