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ニュル24時間レースの人気者オペル「マンタ」はキツネのしっぽ付き! 78歳のオーナー・ドライバーに悲劇の火災と今後の展望をインタビューしました

オラフ・ベックマン氏と愛車のオペル マンタ

みんな大好きニュル名物! オペル マンタのオーナー・ドライバーにインタビュー

ニュルブルクリンク24時間レースなどで長年大活躍し、他のどのマシンよりも拍手喝采を浴びているオペル「マンタ」。アンテナにキツネのしっぽをフサフサさせながら疾走し、ちびっ子からシニアまで大興奮させています。そんなマンタのオーナーでドライバーのオラフ・ベックマン氏にインタビューしました。

ニュル24時間レース参戦を泣く泣く断念

2022年の5月、世界中から20数万人ものファンが大集合する大イベントのニュルブルクリンク24時間レースに参戦するために、北ドイツのハンブルグ近郊にあるファクトリーでオペル「マンタ」を整備中の時のこと。車両に搭載されていたリチウム電池から出火し、あろうことか車両火災に遭い、その大半が炎に包まれるという大惨事が起きました。

地元消防団やファクトリーにいた従業員の方々の懸命な消火活動により、幸いにもファクトリーに延焼はありませんでした。整備に当たっていたメカニックの方々にも大きな怪我はなかったものの、消火剤や煤まみれとなったオペル マンタは甚大な被害を受け、その年のニュルブルクリンク24時間レースの参戦を断念せざるを得なくなったのです。

しかし、長年オペル マンタを大切にしているオーナーでドライバーのオラフ・ベックマン氏は、自身でも20年以上にわたってニュルを中心にさまざまなレースで活躍する超ベテラン・ジェントルマンドライバーです。実業家でもあるベックマン氏に、火災後のオペル マンタの活動について話を伺いました。

9カ月かけて手作業で修復

池ノ内みどり(以下池ノ内):火災のときのことを少し教えていただけますでしょうか?

オラフ・ベックマン氏(以下ベックマン):誰も予想さえもしていなかった不慮の事故でしたが、消防の方が迅速に対応してくれたおかげでファクトリーの全焼は免れました。しかし、車両の損傷被害は非常に大きく、その焼け焦げた車両を見た時には言葉を失いましたが、私は大切なこのマンタを絶対に復活させてみせると心に近いました

池ノ内:その修復にはどれくらいの日時を費やしたのでしょうか?

ベックマン:9カ月間です。ボディを再構築してルーフは全部切り取り、ほぼすべてを一からメカニックと手作業で新しく作り直しました

池ノ内:多方面からのご尽力によってマンタを修復して再び走行が可能となり、ファンにとってはこの上ない喜びでもありますが、ニュル24時間レースの参戦を止めた理由とは?

ベックマン:GT3マシンが出てきてからというものの、マンタとの速度差には危険を感じていました。おそらく主催者も私たちの継続参戦を希望してくれていると思いますが、リスクはとても高く断念せざるを得ませんでした。

一方で、激しいニュル24時間レースですから、いくら細心の注意を払いながら走行していたとしても他車からの接触や破損は避けられませんし、最新の車両と違い、ひとつひとつのパーツが大変高価で貴重なオペルには、その被害は甚大となってしまうのです。

ですから、今年からニュル24時間レースへの参戦を自主的に取りやめています。でも、そのサポートレースに参戦しているおかげで数多くのファンが私たちのパドックへ立ち寄ってくれて、以前と変わらず応援してくれて賑わっていますよ。

ベックマン氏もステアリングを握りレースに参戦予定

池ノ内:2024年はニュル24時間レースのサポートレースのADAC 24hクラシックへ、チームとして参加されますが、ご自身もドライブなさるのでしょうか?

ベックマン:私も自らステアリングを握って走りたいのは山々なのですが、ニュル24時間レースの少し前に手術を受け、まだ体調が完全には回復していません。ドライブはチームメイトに託しましたが、今季中のレースは、マンタをドライブしてオールドタイマーGPなどのレースに参戦しますよ。とはいっても、マンタはクラシックカーやオールドタイマーのなかでは随分と若いですけどね(笑)。

池ノ内:私の目の錯覚かもしれないのですが、ニュル近郊の道路でベックマンさんのマンタにそっくりな車両が目の前を走り抜けて行ったのですが……。もしかすると、あなたご自身はその車両をご存知ですか?

ベックマン:ははは、知っていますよ。オペル マンタのファンクラブに所属している私の車両の熱心なファンの方で、中古のマンタを購入してほぼ同様に作りあげたそうですよ。ビリーくんという若い男性です。

* * *

ベックマンさんは御年78歳! まだまだお元気で、キツネのしっぽで風を切りながらオペル・マンタを颯爽とドライブしている姿をぜひまた拝見したいものですね。ちなみにこのキツネのしっぽはドイツで1970年代~1980年代に若者に流行ったファッションアイテムだそう。

ドイツ国内でマンタが製造されていたのがちょうど1970年~1988年までだそうで、まさしくドンピシャな年代。「ナウいヤング」の必須アイテムだったのでしょうね。走行中に飛んで行ってしまうこともあり、トランポには十分の数がいつも用意されているそうです。

「ドイツ国内はもちろんのこと、日本をはじめ世界各国のファンがこのマンタを愛し、応援し続けてくださることはとても光栄で、とても嬉しく思います」

と、優しい笑顔でお話をしてくださいました。今回は特別にトランポの中までじっくり見せていただき、感謝感激でした。

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