記録を打ち破るパフォーマンスの追求によって新しい世界を定義
ブガッティ「W16ミストラル ワールドレコードカー」の打ち立てた453.91km/hという最高速度は、オープンカーの世界最高速度記録です。この記録は、2024年11月9日にドイツのATP GmbHのテストコースで達成され、この日はブガッティの歴史、そして自動車の歴史に刻まれることとなりました。このW16ミストラルは再びコースに戻り、3台の世界記録樹立車とともに、ブガッティの物語における象徴的な瞬間を共有。これまで世界最速記録を打ち立て続けた4台のクルマを紹介しましょう。
ブガッティは新たな世界へと進出
世界最速記録を打ち立てた4台のクルマは、ブガッティの機械的な進化だけではなく、エンジニアリングの可能性の境界を広げ、圧倒的なパフォーマンスを極限まで高めるという意思を示している。「ヴェイロン 16.4 スーパースポーツ ワールドレコードエディション」、「ヴェイロン 16.4 グランスポーツ ヴィテッセ ワールドレコードエディション」、「シロン スーパースポーツ 300+」、そして今回発表された「W16ミストラル ワールドレコードカー」は、いずれも自動車の歴史において独自の地位を築き、ブガッティの比類なき遺産を築くうえで重要な役割を果たしてきた。
20世紀初頭までさかのぼる比類のない優雅さと気品に彩られた美しく複雑な歴史を礎に、ブガッティは新たな世界へと進出することとなった。それは、記録を打ち破るパフォーマンスの追求によって定義される世界である。その物語は、2010年6月に動き出した。
量産車のルールブックを書き換える
晴れた日のドイツ、エーラ・レシエンにあるテストコースで、ヴェイロン 16.4 スーパー スポーツ ワールドレコード エディションが、ブガッティの新たな10年の幕開けを飾る舞台に上げられた。
ブガッティ初のオフィシャル・パイロットであるピエール・アンリ・ラファンにとっては、これまでのモータースポーツの経験と高性能車の運転における豊富な専門知識を活かす日となった。ヴェイロンのW16エンジンを改良し1200psまでパワーアップされ、4つの強化ターボチャージャーと大型インタークーラーを搭載したヴェイロン 16.4スーパースポーツは、シャシーも全面的に再設計され、自動車界に衝撃を与えた。
ブガッティのエンジニアたちの偉業は、ピエール・アンリの前人未到の431.07 km/hという圧倒的な速さによる世界記録の更新によって、はっきりと証明された。この偉業を称え、最初の5台の量産型スーパースポーツに「ワールドレコード エディション」という独自のシリーズ名が与えられ、記録を樹立した車両と同じスペックが採用された。これにより、ブガッティの顧客は、そのクルマを生み出した努力の精神を体験することができた。
新たな可能性の世界を切り開く
こうした最高速度記録は、クローズドコクピットの車両だけのものではなかった。
妥協のない発明という理念に忠実に、2013年、ブガッティは卓越したエンジニアリングの専門知識をオープンカーに注ぎ込んだ。それがヴェイロン スーパースポーツのプラットフォームをベースに開発されたヴェイロン 16.4 グランスポーツ ヴィテッセ ワールドレコードエディションである。そして中国の起業家であり、熱心なレーシングドライバーでもあるアンソニー・リウ氏が、この息をのむようなマシンを、伝説の地であるドイツ・エラ・レッシエンに持ち込むことになった。
屋外でのパフォーマンスには、巨大な物理的力が作用するため、それを制御するため入念に設計されたデザインが必要とされた。コクピットは風雨にさらされるため、最高のねじれ剛性を実現する強化カーボンモノコックで作られ、特注のルーフスポイラーと複雑に設計された防風板により、高速走行時の空気の流れが最適に管理されるようにした。
モルスハイムのエンジニアたちの情熱と献身の結晶が、エラ・レッシエンで実を結んだ。アンソニーが408.84 km/hを記録し、このブランドの新たな世界記録を樹立したのだ。これによりオープンコクピットで課題となる自動車工学の領域が克服され、8台のワールドレコードエディションが製造された。ブラックとオレンジのツートーンカラーの塗装は、ブガッティの世界記録モデルを象徴している。