最高速度を究極の高みへ
世界記録を次々と塗り替えるという比類なき歴史を築いてきたブガッティは、2019年夏、自動車の性能を不可能と見なされていたレベルにまで引き上げるという偉業を成し遂げた。
シロン スーパースポーツ 300+は、ホイールからすべてにおいて、その偉業を実現するために徹底的に設計されたマシンである。強化された熱管理システムを備えた8L W18+4ターボエンジンからは、1600psを発生する最高傑作である。このモデル専用に設計された「ロングテール」ボディワークは、より優れた空力効率を確保し、空力失速を40%も減少させた。
完璧なまでに設計され、人類の努力の概念を再定義する準備が整ったこのクルマは、ブガッティの公式ドライバーであるアンディ・ウォレスの手によって、再び自動車業界を驚かせた。量産車として史上初めて時速300マイル(約480km/h)の壁を破り、公式に時速490.484km/hという驚異的な記録を樹立したのだ。
30台のシロン スーパースポーツ300+エディションは、自動車史に永遠に名を残すこのクルマの伝説を確固たるものにした。 ジェットブラックの露出カーボンファイバー仕上げに、車体全体に2本のジェットオレンジのレーシングストライプが施されたこのクルマは、世界記録車のスピリットを受け継ぎ、ブガッティの革新の新たな10年を迎える。
記録を破る空力の支配者
3台のワールドレコードカーの偉業にもかかわらず、ブガッティチームは比類なきスピードを追い求めることをやめなかった。W16エンジンの物語に変化の風が吹き荒れる中、ブガッティのW16エンジンを搭載する最終的な傑作を誕生させた。南フランスで季節の移り変わりを告げる独特の風にちなんで名づけられたオープンカーのW16ミストラルである。
W16ミストラルのフロントには象徴的なブガッティの馬蹄形グリルを配し、リアには巨大なディフューザーを搭載。 複雑に設計された機能のすべてが、パワーを最大限に引き出すために設計されている。 8LのW16気筒エンジンから生み出される1600psの強大なパワーと相まって、このクルマは空気を切り裂くようになめらかに走り、オープンカーならではのドライビング体験を存分に味わえる。
量産車としての複雑な設計と綿密なエンジニアリングにより、このW16 ミストラルは、記録達成に際してほとんど修正を必要としなかった。ボディパネルの隙間を最適な空気の流れのために覆い隠し、空気抵抗を減らすためのサスペンションの調整を行い、エンジンのフルパワーを引き出すためにスピードリミッターを解除したことで、このクルマは歴史を作る準備ができた。
最小限の微調整と最適化、そして「ワールドレコードカー」のスピリットがその血管を駆け巡り、アンディ・ウォレスがハンドルを握るという経験を武器に、W16ミストラル ワールドレコードカーは2024年11月9日、パペルンブで世界記録チャレンジを行った。そして、この特別なクルマの顧客とブガッティの経営陣が見守るなか、アンディはブガッティと自動車の歴史に新たな1ページを加えた。それはオープンカーの世界記録を大幅に上回る453.91 km/hという驚異的な速度を記録した。
AMWノミカタ
ヴェイロンの400km/hを超える最高速度記録のニュースは衝撃的だった。この431.07 km/hという記録は、当時の一般的なスーパーカーの最速記録に比べ100km/hくらい速いものだったと記憶している。
20世紀前半のブガッティは芸術的な美しさとレースでの数々の勝利で名声を持ち合わせた唯一無二のクルマだった。21世紀に入り、その伝統をさらに進化させるためにはブガッティらしい圧倒的な存在感を見せる必要があったのであろう。
そのひとつは記録を打ち破るパフォーマンスの追求によって新しい世界を定義することであった。クルマの限界を超えて進化させるには、空力特性、素材、パワートレインの効率化など、さまざまな分野での技術的進歩が必要となる。ブガッティのスピード記録への挑戦は、単なる記録更新にとどまらず、デザイン、設計、エンジニアリング、そしてブランドの威信を賭けた、これからも続く自分自身との終わらない戦いなのだろう。