むき出しのステンレスがカッコいいDMC-12
2025年は、ハリウッドのSFアドベンチャー映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の第1作が公開されて40周年。この映画で忘れられないのがデロリアン「DMC-12」でしょう。主人公のマーティが乗るタイムマシンとして登場したこのクルマの外装はオールステンレスボディで身を包んでおり、唯一無二の存在感を放っていました。でも、そもそもの疑問ですが、なぜ世のクルマにはデロリアンのようなステンレスボディを持つクルマがほぼ存在しないのでしょうか。それには、ステンレスという素材が持つ特性や今のクルマの作り方などが、大きく関連しているようです。
ジョルジェット・ジウジアーロがデザインし、ロータス社が設計
デロリアンとは、じつはアメリカ合衆国にあった、このクルマを製造販売したメーカーの名称のこと。正式なメーカー名はデロリアン・モーター・カンパニー(DMC)といい、モデル名は「DMC-12」となる。
今はなきDMCというメーカーは、元ゼネラルモータース(GM)の役員だったジョン・デロリアン氏が立ち上げた企業で、理想の本格的GTカーを作ることを目的に米・デトロイトに設立。その夢を注ぎ込んで、1981年に発売したのがDMC-12だ。
このモデルは、その中身に数々の欧州メーカーのエッセンスなどが注ぎ込まれていたことも特徴だ。たとえば、エンジンには、プジョー、ルノー、ボルボが共同開発した2.8L V型6気筒を搭載。
またシャシーなどは、当時、F1コンストラクターなどとしても名高かったコーリン・チャップマン氏率いるロータス社が担当した。そして個性的なデザインは、イタリア・カーデザイン界の巨匠であるジョルジェット・ジウジアーロ氏が手がけ、エッジの効いた近未来的フォルムを生み出した。
2年間で約8000台製造された
まさに欧州的スポーツカーのエッセンスが満載だったといえるDMC-12は、発売開始直後こそ好調な売れ行きを見せたそうだが、その後失速。初期型のクオリティが低かったなどが要因といわれており、受注のキャンセルが相次ぐなどで、同社は経営難に陥ったという。
さらに経営者デロリアン氏のスキャンダルなども重なり、会社は1982年に倒産。DMC-12は、わずか2年ほどの間に約8000台ほどが作られただけという、レアなクルマとなった。
そんな背景のなか、前述の通り、1985年公開の映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で、主人公のマーティ(マイケル・J・フォックス)が乗るタイムマシンとしてDMC-12が登場。映画の大ヒットとともに、このクルマにも大きな注目が集まり、現在もコレクション的なクルマとして高い人気を誇っているのだ。
近未来のスポーツカーを想像させるステンレスボディ
そんな背景を持つDMC-12。その最大の特徴が、無塗装のステンレスボディだ。実際は中の骨組みはFRPで、ステンレス製のパネルを取り付けた構成になっているそうだが、いずれにしろ、外装はサビが出にくいステンレスとなっている。また、表面は、加工時に付くサンドペーパーの傷がそのまま残ったヘアライン仕上げになっていることで、独特の風合いをもたらしていることも魅力だ。
これに左右ドアが上方に上がるガルウイングドアを組み合わせることで、まさに近未来のスポーツカーをイメージさせるフォルムが生まれているといえる。