ステンレスボディのデメリットとは
ステンレスボディを採用しているのがDMC-12の個性だが、ここで気になるのが、なぜ今まで他の多くのモデルにはステンレスボディが採用されてこなかったのかだ。
ステンレスという素材は、一般的なクルマに使われる鉄鋼(スティール)などと比べると、「塗装しなくても錆びづらい」、「非常に丈夫で耐久性のある金属」といった特徴がある。だが、実際に、DMC-12以外のモデルで、ステンレスボディを採用しているといえるのは、テスラのフルサイズEVトラック「サイバートラック」くらいだ。他の採用例は、筆者が知る範囲ではほぼない。
では、なぜなのか? あくまで私見だが、まずはステンレスといっても、完全に錆びないわけではないということ。たとえば、海岸地帯での使用や、人間の汗が付着するような環境ではサビが発生するケースもある。
また、ステンレスは非常に硬いため、ボディ用に成型する際の加工がとても難しいといえるだろう。とくに最近のクルマは曲面を多用するようなデザインのモデルも多いが、ステンレスで再現するのは困難だったり、もしできてもコストが高くなるようだ。
さらに、ステンレスは、現在のクルマ作りの考え方としては、「丈夫すぎる」点もあるだろう。今のクルマは、歩行者保護や他車両と衝突した際に、あまり攻撃性が強くならないように、衝撃吸収性も考慮して設計されている。たとえば今のクルマのバンパーは昔のクルマのものと比べ、凹みやすくなったなどとよくいわれるが、それはこうした設計思想が反映されたものだといえる。
ボディが丈夫すぎると乗員にも大きな負担を与えてしまう可能性が…
また逆に、ステンレスのように強い金属は衝突時に変形しづらいため、事故などで衝突した際、乗員がボディで吸収しきれなかった衝撃波をまともに受ける危険性もある。つまり、ボディが丈夫すぎると、周囲の安全だけでなく、乗員にも大きな負担を与えてしまう可能性があるといえるのだ。
以上は、前述の通り、あくまで筆者の推測だが、ステンレスボディのクルマがほぼ市場に出ていないことは間違いない。そのためDMC-12のような個性的な外観を持つクルマは、なかなかお目にかかる機会はない。
ただし、カスタムの手法には、「ヘアライン塗装」というものがある。これは、一般的な外装を持つクルマに塗装することで、ステンレスの表面をサンドペーパーで削ったような見え方にできるカスタムペイントだ。また、カーフィルムをボディに施すラッピングでも、ヘアラインのシートを使う手法があり、いずれも、外観をかなりワイルドにできるし、外装のサビも出にくくなるといったメリットもある。
興味のある人は、自分の愛車に、こうしたカスタムを施してみるのも面白いかもしれない。だが、その際は、くれぐれも違法改造にならないような範囲でやることをおすすめする。