南の街アリススプリングスを目指して1日で1000キロ走ることに……
オーストラリア・ノーザンテリトリー州でトヨタ「ハイラックス」ベースのキャンピングカー、アポロ「キャンパーバン」をレンタルして、釣り人としてバラマンディの大物を狙う23日間の旅をレポート。仲間とフィッシングを満喫した後は国立公園を一人旅。旅の終盤は、アリススプリングス空港に妻を迎えに行くべく、1日で約1000kmを移動することとなりました。
治安の悪い街を避けつつハイウェイを突き進む
今日は、ビッグデイである。マタランカのビタースプリングス・キャンプ場からアリススプリングスまでのロングドライブだ。Airbnbで予約した宿をナビに入力すると、「↑1070」と出た。なんと、1070km直進というわけだ。
朝、7時、夜明けとともに出発。かつて、よく一緒に仕事をしていたカメラマンが、「早く着きたければ、休まないこと」と長距離ドライブの極意を語っていた。時速110km/hで走り続ければ10時間で着く。ナビの到着時間は午後5時。給油と休憩に1時間半をみて、目標到着時刻を午後6時半とした。
はたしてどうなるか!? アウトバック爆走、スタートだ!
じつは、このルートには別の不安もあった。例のアボリジニー問題である。とくに、ルート上最大の町、テナントクリークは悪評が高かった。知り合いのオーストラリア人は、「テナントクリークでクルマを離れてはいけません。80%の確率でクルマが傷つけられます」と言っていた。80%とは、ものすごい確率だ。
キャサリンでアボリジニー問題を肌で感じて、ルート上の宿泊を避けたのも事実だった。給油や休憩は最小限にして、早くアリススプリングスに到着することを目標にした。
しかし、いざ走ってみると心配が無用だったことが分かった。ガソリンスタンドには、ほとんどアボリジニーの姿はなく、ちゃんとしたビストロやモーテルを併設しているところもあった。サービスのないレストエリアも基本的にオーバーナイトがOKで、泊まっている人も多いようだった。これを知っていれば、昨日のうちにあと300kmくらい走っておいたのに、と後悔した。もちろん、後の祭りである。
ただし、テナントクリークだけは噂どおりだった。キャサリンから白人がいなくなったような町で、歩き回っているのはアボリジニーだけ。町をぐるっとひと流しして、そのまま走り去った。
地球の回転を実感しながらひたすら南へ
1000kmはやはり遠い。走っても走ってもナビの数字は減っていかない。あとでネットで調べてみると、東京から1000kmは北海道の伊達紋別。小笠原も1000kmだそうだ。そりゃ、遠いわけだ。おそらく、自分の人生のなかで、最も長いドライブになったと思う。
草原と林が入り混じるアウトバックの景色も見飽きてきた。仕方ないので、ひとりで歌を歌ったり叫んでみたりするが、それで距離が減るわけではない。
しかし、面白いことに気がついた。真南に向かっているため、太陽が左(東)から真上に、そして右手(西)へと移っていくのだ。地球が回転していることを実感するドライブだった。
到着の目標時刻を午後6時半にしたのには、もうひとつ理由があった。それは、6時半になると急に暗くなるのだった。「夜は絶対に走らないで」と、レンタカー会社のリズさんと約束をした。
ところが、すでに6時半の到着は不可能だ。ナビの予定時刻は7時半になっている。彼女とのもうひとつの約束、「110km/h以上はスピードを出さないこと」も破り、120km/h巡航で懸命にアリススプリングスを目指す。