決算発表からわずか1カ月で経営統合へと歩み出した
2023年12月23日、日産とホンダは両社の経営統合に向けた協議・検討を開始することに合意。共同持株会社設立による経営統合に向けた検討に関する基本合意書を締結したと発表しました。この経営統合には日産の経営健全化がキーポイントとなっていますが、現在の日産についてダメだと思う部分を、NISMO(ニスモ)やAUTECH(オーテック)といったカスタマイズカーに乗るコアなファンに聞いてみました。
部分的なパートナーから持株会社設立へ
2024年11月に開催された、日産自動車の2024年度上期決算発表において、営業利益が対前年比9割減となる329億円という衝撃の発表がされた。中国の販売不振や北米におけるインセンティブの増加により、経営が圧迫されたことで、グローバルでの生産能力を20%削減、従業員9000人のリストラが発表された。
そして12月23日、日産とホンダは両社の経営統合に向けた協議・検討を開始することに合意。共同持株会社設立による経営統合に向けた検討に関する基本合意書を締結したと発表した。両社はすでに2024年3月にクルマの知能化・電動化時代に向けた戦略的パートナーシップに関する覚書を締結している。
そして2024年8月には、より幅広いスコープでの協議・検討を進めるため、戦略的パートナーシップの深化に関する覚書を締結するとともに、とくに知能化・電動化の要となる、次世代ソフトウェアデファインドビークル(SDV)向けプラットフォームの領域における基礎的要素技術の共同研究契約を締結するなど関係を深めてきたが、日産の決算発表により事態は大きく変わった。
共同持株会社の上場日は、2026年8月を予定していて、この上場にともない、日産自動車とホンダの両社は上場廃止となる予定。ただし両社の株主は、引き続き本株式移転に際して交付された共同持株会社の株式を東京証券取引所において取引できる予定となっている。
決算発表から約1カ月で事態が大きく急変したが、衝撃的な決算発表がされた直後の11月16日に開催された日産のコアなファンが集まる「AOG湘南里帰りミーティング2024」で、所有している日産車を選んだ理由と現在日産が苦戦している理由を、約50人のオーナーにアンケートを取ったので紹介しよう。
現在の日産車を選んだ理由は、約52.5%の人が「デザイン」、次いで「走行性能」が約25%、「メーカーの哲学」が5%、そして「その他」が17.5%となった。日産純正のカスタマイズカーのオーナーということもあり、空力性能を向上させるエアロパーツを装着したデザインや、ベース車の素性をスポイルすることのないフィット感の高さなどが高く評価されている。
続く走行性能という面では、GT-R NISMOやスカイラインNISMOのような絶対的な速さだけでなく、AUTECHのような運転する楽しさを感じられるという味付けも評価されている。
車種が少ない中、キューブ復活の声は多い
このようなコアな日産ファンたちに現在日産が苦戦している理由を聞いてみると、約50%の人が「車種ラインアップの少なさ」を挙げた。次いで、約18%の人が「BEVに投資しすぎ」、約15%が「経営陣の判断」、約8%の人が「ユーザーを大切にしない」、そして約9%が「その他」という答えになった。
半数の人が挙げた車種ラインアップの少なさということでは、コンパクトカーが「ノート/ノート オーラ」しか選択肢がなく、とくに「キューブ」の復活を望む声が多かった。またトヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」のようなコンパクトサイズのミニバンがないのは厳しい。キューブベースのコンパクトミニバンの登場を望む声は多い。
セダンも「スカイライン」しか選択肢がないし、「GT-R」もすでに生産終了が決定しており、国内市場で販売される車種ラインアップが減少の一途をたどっていることも懸念する声が多い。
また、日産は「アリア」、「リーフ」、「サクラ」と国内メーカーの中では充実したBEVラインアップを誇るパイオニアとなっている。しかしコアなユーザーからはこのBEV戦略自体が時期尚早だったように映り、この戦略の失敗が車種ラインアップのモデルライフ延長や車種ラインアップの減少に繋がったように見えるのだろう。
そして一部のユーザーからは、「日本市場を軽視している」、「リコールの対応が悪い」、「メーカーと販売店(ディーラー)の連携ができていない」という意見があった。こういった意見をまとめると、日産車のコアユーザーからは、日産は日本のユーザー/市場を軽視していて市場にマッチした商品を揃えていない。そしてスカイラインといった強いブランドもあるのに生かし切れていないということになるだろう。
トヨタはモリゾウこと豊田章男会長が、「もっといいクルマを作ろうよ」を合い言葉に、各マーケットをリサーチして、ユーザーが欲しいと思うクルマを提供しているからこそ、新車の納期が長くなっても支持されているのだと言える。
まず日産の経営陣は、経営の立て直しはもちろんだが、もっと自社のクルマを所有するオーナーの意見に耳を傾けて、ニーズに合った商品を1日も早くリリースしてもらいたいと思う。