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2024年、ロールス・ロイスの至高のビスポークを振り返る…カスタマーと「会話」することから生まれたクラフツマンの高い技術力を見てみよう

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TEXT: AMW  PHOTO: Rolls-Royce Motor Cars

世界に1台の幻想的な「スペクター ルナフレア」

米国の顧客のために製作された「スペクター ルナフレア」は、月の光が巻雲の氷の粒子に反射して生じる月暈(げつうん/つきがさ)から着想を得たボディカラーを採用し、オーダーメイドのホログラム塗装によって、幽玄な虹色の輪が現れる仕上がりになっている。

この月暈を再現するのに1年以上かけて開発が行われ、最終的には、特別配合の真珠光沢のコーティングを含む7層のラッカー塗装を施し、フレーク状のフッ化マグネシウムとアルミニウムを注入することにより完成した。ほの暗い環境では深いメタリック効果を演出し、明るい日光の下では虹色の万華鏡のような輝きを放つ。

創業120周年を記念した「ゴースト エクステンデッド シリーズII ザ エンカウンター」

この優美なモデルは、ロールス・ロイスの創業120周年を記念して製作された。チャールズ・スチュアート・ロールズとヘンリー・ロイスのイニシャルがそれぞれヘッドレストとCピラーに刻まれ、コーチラインには同社の歴史的な日付が施される。

インテリアは竹から作ったレーヨン生地「デュアリティ・ツイル」で仕上げられ、「デュアリティ」のグラフィックが刺繍されている。

天を駆ける龍をデザインした「ファントム イヤー オブ ザ ドラゴン」

上海のプライベート・オフィスの依頼により、中国で2024年2月10日に祝われる旧正月を記念して製作された。インテリアは、伝統的な龍のシンボルから着想を得て細部まで丹念に作り込まれている。

助手席のフロントパネルには手描きの龍のアートワーク、ヘッドレストには龍の刺繍が施される。スターライト・ヘッドライナーには677個のスターが描かれ、龍のデザインを採用している。

AMWノミカタ

「ビスポーク」という言葉は「あつらえ」や「特別注文」という意味で使われる。諸説あるが「Be spoken for(おっしゃられる通りに)」から生まれた言葉という説が濃厚である。とくにテーラーで洋服を仕立てるときに使われ、これにはカスタマーと「会話」をするという行為が重要となり、「会話」を通じて要望を具体化してゆく。

ロールス・ロイスは本来のこのビスポークの精神を重要視し、この「会話」をするためのプライベートスタジオを世界で5カ所に展開している。その目的は思いも寄らない発想をもつ顧客からの難度の高い注文と出会い、それを具現化することでクラフツマンの技を高め、唯一無二のブランドとしてその存在感を示すことである。

ベントレーも最近「ミューズ」と呼ばれるビスポークスタジオを本社近くに設立し、本格的にビスポークオーダーの獲得を目指している。パワートレインの選択肢が縮小し、いずれ電動化されるブランドにとって、それを補完する喜びを顧客に提供することが将来必要となってくるのであろう。「選択」から「創造」へ顧客のニーズが変わってゆくのかもしれない。

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