バブル時代の日本でも持て余し気味だった? 12気筒の高級クーペ
独バイエルン州ミュンヘンといえば、カーマニアにとってはBMWの故郷、聖地として認知されています。100年前には鉄道車両の点検・修理に使われていた施設を改装したという、自動車エンスージアストの楽園「モーターワールド・ミュンヘン」を会場とし、2024年11月23日にRMサザビーズ欧州本社が開催した「Munich 2024」オークションでは、さる個人コレクションが「The Munich Masterpieces Collection(ミュンヘンの傑作コレクション)」と銘打ち、聖地でのオークションに相応しく2輪・4輪合わせて24台の素晴らしいBMWを出品しました。今回はその出品ロットの中からBMW「850Ci」をピックアップ。そのあらましと注目のオークション結果についてお伝えします。
傑作E24系6シリーズ後継車は、スーパーカーの雰囲気を漂わせる高級クーペに
現代のBMW、たとえば「3シリーズ」「5シリーズ」「7シリーズ」。あるいは一連のSUVたちとは異なり、1989年の西独フランクフルト「国際モーターショー(IAA)」において発表されたE31系「850i」はクリーンかつアグレッシブなスタイリングで、世のクルマ好きに強烈な印象を与えることになった。
当時BMWのフラッグシップとなるグランドツアラー・クーペであったE24型「6シリーズ」の間接的な後継モデルとしてアピールされた「8シリーズ」は、CD値0.29という空力特性に優れたクーペボディと、低いボンネット先端に伝統のキドニーグリルを配し、ポップアップ式ヘッドライトとともに、同時代のスーパーカー的アピアランスを得ていた。
また、のちに大部分のBMW車でデフォルトとなるマルチリンク式リアサスペンションを、同社の量産車としては初めて採用したのも、初代8シリーズにおける重要なトピックといえよう。
デビュー当初のラインナップは、V型12気筒バンクあたりSOHC・24バルブ5.0Lの「M70」型エンジンを搭載し、最高出力300ps/最大トルク45.9kgmのビッグパワーを発生させる850iのみの体制。しかし、1994年にはV型8気筒4カムシャフト・32バルブ4.0Lを搭載(のちに4.4Lに拡大)したエントリーグレード「840Ci」、および「BMW M」開発の5.6L・V12「S70」エンジンを搭載したスポーツグレード「850CSi」が登場したいっぽう、時を同じくして「850Ci」に改名していた12気筒スタンダード版は、ほどなくフェードアウトすることになる。
それでも、E24系6シリーズよりも大幅に増してしまったウェイトや、マルチリンク・サス採用のため容量が小さくなってしまったトランクスペース、そして初期のV12モデルで頻発した電装系のトラブルなどが、意欲作だったはずの8シリーズ全体の評価を低めてしまい、残念ながら商業的には成功作とはなり得なかったのだ。
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