初めての愛車はベルトーネデザインのフィアット X1/9
そんな筆者のなかで、スーパーカーブームの私的影響が明確になるのは、むしろ大学生になってからのことだった。いわゆる「大学デビュー」を経て、初めての愛車を手に入れるにあたりMG「ミジェット」や「MG-B」と比較して悩んだ挙句、同じ小型スポーツカーでもスーパーカー的な要素があるフィアット「X1/9」を購入してしまう。
この時代におけるホントの陽キャならば、当時の学生の憧れの的だったホンダ「プレリュード」やトヨタ「ソアラ」あたりに食指を伸ばすところながら、ここへ来てもフィアット X1/9に飛びついてしまったのは、フェラーリ好き。スーパーカー好きのクルマオタクとなっていたからに相違ないだろう。
また、フェラーリの生まれた国をこの目で見たいと思い、学生のうちから幾度となくイタリアに貧乏旅行を繰り返し、電車とバスを乗り継いで「マラネッロ詣で」も果たすことができたのだが、それも普通の学生からしてみたら、ドン引きされてしまいそうな行動に違いあるまい。
さらに4年生になって就職活動が始まると、いくつかの総合商社を回った結果として、当時はフェラーリの日本総代理店だった「コーンズ&カンパニー・リミテッド」に就職。実を言えば、ほかの部門を希望していたのに自動車部に配属されたあたりから、この世界で生きてゆこうと腹をくくる。
そして、その後のイタリア留学からブガッティへの再就職に至るまでの行動はすべて、小学生時代のスーパーカーブーム以来ずっと培われてきた志向性によって導かれたものと考えられなくもない。
すなわちこれらはすべて、遅効性の私的スーパーカーブーム。今では、そう思うのである。