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「ウルル」が夕日で赤く染まる景色を坂本龍一『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』を読みながら待つ至福の時間…お約束でも絶対見る価値ありです【豪州釣りキャンの旅_16】

「ウルル」が夕日で赤く染まる景色を坂本龍一『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』を読みながら待つ至福の時間…お約束でも絶対見る価値ありです【豪州釣りキャンの旅_16】

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TEXT: 牧野森太郎(MAKINO Shintaro)  PHOTO: 牧野森太郎(MAKINO Shintaro)

坂本龍一の本を読みながら夕景を待つ……

サンセットビュー・ポイントは駐車スペースが限られている。混雑が予想されるので、日没の1時間半前にいくと、さすがに早すぎるのか、駐車場は閑散としていた。一番よさそうな場所に「アポロ号」を停め、ゆっくりとサンセットを待つことにした。

ウルルを前に荒野を吹き抜ける風を受けていると、本を読みたくなった。見ると、キャンピングチェアを出して、読書をしているカップルがいた。荒野と風と読書。ここでは気持ちのいいバランスが成り立っている。

今回の旅のお供は、坂本龍一『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(新潮社/2023年)。がんに冒された坂本さんが、病と戦いながら晩年の仕事に取り組む記録だ。

じつは、若い頃のテクノポップのイメージが強く、ぼくは坂本龍一の音楽を避けてきた。ところが、『Ryuichi Sakamoto: CODA』(KADOKAWA/2017年)というドキュメンタリー映画を見て、衝撃を受けた。彼の音楽に流れる静謐さというか静けさに心を打たれたのだ。それから、晩年の音楽を聴きまくり、『音楽は自由にする』(新潮社/2009年)を読んで、すっかりファンになってしまったのだった。

旅も2週間を超え、本は最終章を残すだけだった。夕景が訪れるのを待ちながら、噛み締めるように本を読み終えた。

* * *

日没予定時刻の6時15分が近づき、駐車場はいっぱいになった。そこかしこでテーブルを出してミニパーティーを始めるグループもいる。写真を撮ってもらう、撮ってあげる、の交流も盛んだ。ウルルの日没はにぎやかな雰囲気でクライマックスを迎えようとしていた。

そして、ついにその時刻を迎えた。ぼくたちの目の前で、赤い巨岩は見事に発光した。色づいた空もウルルの光に染まったようだ。ここまで何千kmも走った。遠い道のりだったけど、来てよかった。胸に温かいものが流れた。

■「豪州釣りキャンの旅」連載記事一覧はこちら

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  • 牧野森太郎(MAKINO Shintaro)
  • 牧野森太郎(MAKINO Shintaro)
  • アウトドア誌、ライフスタイル誌などの編集長を経験。2001年にアメリカでキャンピングカーを購入して以来、国立公園を訪ねることをライフワークとする。著書に『アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅』『自分自身を生きるには 森の聖人ソローとミューアの言葉』(ともに産業編集センター)がある。カリフォルニア州シェラネバダ山脈のジョン・ミューア・トレイルを計30日かけて踏破したレポートがデルタ航空機内誌「sky」に掲載され、カリフォルニア観光局のメディア・アンバサダー最優秀賞を受賞。
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