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生産台数10台以下のRUFが存在した!「BTR」や「CTR」ではないニッチな「911カレラ 3.2」が誕生した理由とは?

生産台数10台以下のRUFが存在した!「BTR」や「CTR」ではないニッチな「911カレラ 3.2」が誕生した理由とは?

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2024 Courtesy of RM Sotheby's

カナダからアメリカ、イギリス、中東を渡り歩いた個体

このほどRMサザビーズ「Dubai」オークションに出品されたRUF仕立ての911カレラ 3.2は、特徴的な色合いの「ガーズレッド」のボディカラーにブラックのレカロシートの組み合わせ。伊「スピードライン」社製のRUF純正17インチ5本スポークホイールを装着し、カナダに輸出された3台のうちの1台と見られている。

1984年12月1日、アルバータ州の「ジャーマン・オート・セールス」社を介してRUFにオーダーしたオンタリオ州在住の初代オーナー、ボブ・カースウェル氏は、通常のポルシェ・カレラよりも2万ドル高いプレミアムを支払ったとのことである。彼は1985年5月30日から1987年7月までこの911を所有し、そののちカルガリーのピーター・ハットン氏に売却された。

そして1989年1月、RUF 911はブリティッシュ・コロンビア在住のジョージ・B・マルシアル氏に譲渡されることになった。「ポルシェ・クラブ・オブ・アメリカ」のメンバーでもあったマルシアル氏は、18年後の2007年5月に至るまでこの個体を所有し、その時点で11万2400kmを走行していたと報告されている。

4人目のオーナーはカナダ・サスカトゥーンを拠点に2013年5月までこのクルマを所有し、その後はアメリカ合衆国アリゾナ州に移ったのち、2013年末にアブダビ在住の人物によって購入された。

彼らの所有期間中にはイギリスのコーンウォールでも過ごした時期もあり、この時『911 & Porsche World』誌2017年9月号に掲載される前に、ポルシェおよびRUFのスペシャリストであるウィリアムズ・クロフォード氏によってチェックを受けたとされている。

走行距離は13万9968キロを刻んでいる

この希少なRUFカレラ3.2は、オークションの公式ウェブカタログ作成時点で13万9968kmを走行していた。また、その生涯を通じて入念にメンテナンスされてきたため、包括的なヒストリーファイルや刻印入りのサービスブック、オーナーガイドが残っているほか、純正のツールロール、スペアホイールも付属品として完備している。

ところで、今回のRMサザビーズ「Dubai」オークションは、舞台はドバイながら売買はすべて米ドル建て。そして同社欧州本社の営業部門は現オーナーとの協議の結果、37万5000ドル~42万5000ドル(邦貨換算約5920万円〜約6700万円)というなかなか強気のエスティメート(推定落札価格)を設定することとした。

このエスティメート自体は、ビッグバンパー時代のポルシェ911をベースとする創成期の空冷RUFとしては決して高すぎるものではないと思われる。ところが、現在の国際マーケットでもてはやされるのは「BTR」や「CTR」など、あくまでRUF本社でコンプリートカーとして製作されたターボチャージャーつきモデルに限定されるようだ。

この時代、ルーフとボディサイドパネルの継ぎ目にあるルーフチャンネルを削り落とすのがRUF製コンプリートカーの流儀だったはずながら、それが残されているこのRUF カレラ 3.2は、今回のオークションでは売り手サイドが設定したリザーヴ(最低落札価格)には届くことなく、結局Not Sold(流札)に終わってしまったのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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