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70年代には最高速400キロを超えていた! ガルウイングのメルセデス・ベンツ「C111」は数々の世界記録を樹立…ロータリーからディーゼルにV8モデルまでを紹介します

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TEXT: 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)  PHOTO: Mercedes-Benz AG

  • 1969年、ホッケンハイムリンクでテスト走行中のメルセデス・ベンツ最初のC111。当初のボディは白だった
  • 1969年、メルセデス・ベンツC111-Iに採用した600ccのM950F 3ローターエンジンを手にする、メルセデス・ベンツ乗用車開発責任者ルドルフ・ウーレンハウト
  • メルセデス・ベンツC111の最初のバージョンである1/1デザインモデル
  • 1969年7月中旬にウンタートルクハイムの風洞で行われた空力テストで完成した最初のC111。当初のボディは白だった
  • メルセデス・ベンツは1970年3月12日から22日まで開催されたジュネーブモーターショーで600ccの4ローター・ロータリーエンジンを搭載したC111-IIを発表
  • メルセデス・ベンツは1970年3月12日から22日まで開催されたジュネーブモーターショーで600ccの4ローター・ロータリーエンジンを搭載したC111-IIを発表
  • メルセデス・ベンツは1970年3月12日から22日まで開催されたジュネーブモーターショーで600ccの4ローター・ロータリーエンジンを搭載したC111-IIを発表
  • メルセデス・ベンツは1970年3月12日から22日まで開催されたジュネーブモーターショーで600ccの4ローター・ロータリーエンジンを搭載したC111-IIを発表
  • メルセデス・ベンツは1970年3月12日から22日まで開催されたジュネーブモーターショーで600ccの4ローター・ロータリーエンジンを搭載したC111-IIを発表
  • C111-IIのリアトランクには、メルセデス・ベンツ専用の小さなスーツケース2つと大きなスーツケース1つを収納できる
  • C111-IIのリアトランクには、メルセデス・ベンツ専用の小さなスーツケース2つと大きなスーツケース1つを収納できる
  • ウンタートルクハイムのテストトラックで高速テスト中のC111-II
  • C111-IIは1970年3月、ウンタートルクハイムのテストコースでコーナリングテスト中
  • C111-IIのX線透視図。4ローター・ヴァンケルエンジンを搭載
  • 1974年10月30日、ドイツ連邦大統領ヴァルター・シェールはダイムラー・ベンツ社を訪問。ハンス・シェレンベルク博士は、大統領を助手席に乗せてウンタートルクハイムのテストトラックでC111-IIのテスト走行を実施した
  • C111-IIの4ローターエンジンの本体部分
  • C111-IIの4ローターエンジンの断面
  • C111-IIの4ローターエンジンの断面
  • C111-IIの4ローターエンジンの4サイクル行程
  • 作業台にはC111-Iに採用されるM950Fの3ローターと4ローターのバリエーションがある。作業台の左端には乗用車のエンジン設計責任者であり、メルセデス・ベンツのロータリーエンジン開発のメイン提唱者であるヴォルフ・ディーター・ベンジンガーがいる
  • 1976年6月、ナルドサーキットで5気筒ターボディーゼルを搭載して64時間世界記録に挑戦中のC111-IID
  • 1976年6月、ナルドサーキットで5気筒ターボディーゼルを搭載して64時間世界記録に挑戦中のC111-IID
  • 1976年6月、ナルドサーキットで5気筒ターボディーゼルを搭載して64時間世界記録に挑戦中のC111-II D。写真は燃料補給のためピットイン
  • C111の3機:1970年のC111-II(中央)、1969年のC111-I(左)、C111の初期プロトタイプ・ホーベル(右)。1970年撮影
  • C111-IIにV型8気筒ガソリンエンジンを搭載した個体。写真は2022年、ロサンゼルスでのドライビングショット
  • C111-IIにV型8気筒ガソリンエンジンを搭載した個体。写真はスタジオ撮影
  • 1969年と1970年のC111-IおよびC111-IIに関するプレス関係資料
  • C111-IIはメルセデス・ベンツ・ミュージアムの「技術の魅力」コーナーで展示中
  • 1978年のC111-III。同年に撮影した写真
  • 1977年3月末、ジンデルフィンゲンのスタイリストたちは空力原理に基づいて設計された2シータークーペのデザイン開発プロセスを発表。写真の中央に写っているのがピーター・ファイアーで、彼のデザインは社内コンペティションで優勝した
  • 1978年4月30日、C111-IIIはイタリアのナルドサーキットで連続12時間にわたるレコード走行で、見事に9つの世界記録を樹立した
  • 1978年4月30日、C111-IIIはイタリアのナルドサーキットで連続12時間にわたるレコード走行で、見事に9つの世界記録を樹立した
  • 1978年4月30日、C111-IIIはイタリアのナルドサーキットで連続12時間にわたるレコード走行で、見事に9つの世界記録を樹立した。写真はピットイン
  • 1979年5月、C111-IVはV型8気筒ガソリンターボチャージャーエンジンを搭載し、イタリアのナルドサーキットの記録走行で最高速度403.978km/hを記録した。とくに、このC111-IVはナルドサーキットの最高速度記録を更新
  • C111-IVはさらなる空力性能向上のためにフロントスポイラーと飛行機の水平尾翼の2枚のリアウイング、垂直尾翼状の2枚のフィンが取り付けられた。写真はウンタートルクハイムのテストコース
  • 1979年5月、ナルドサーキットで記録挑戦中のV型8気筒ガソリンターボチャーエンジンを搭載した記録破りのC111-IV。写真はピットイン
  • ポール・フレール、グイード・モッホ、ハンス・リーボルト、それにリコ・シュタイネマンの4人のドライバーが駆るC111-IIIが9つの世界記録を樹立
  • メルセデス・ベンツC111-IのX線透視図。ボックスセクションフレームとロールオーバーバーとして機能するように設計されたリアバルクヘッドサラウンドが見える
  • メルセデス・ベンツは1970年3月12日から22日まで開催されたジュネーブモーターショーで600ccの4ローター・ロータリーエンジンを搭載したC111-IIを発表
  • メルセデス・ベンツは1970年3月12日から22日まで開催されたジュネーブモーターショーで600ccの4ローター・ロータリーエンジンを搭載したC111-IIを発表

ロータリーエンジンの実験試作車からレコードブレイカーへ

1969年9月のフランクフルトモーターショー(IAA)でデビューしたメルセデス・ベンツ「C111」は、伝説の「300SL」を彷彿させるガルウイングドアを持つミッドシップ2シーターで、心臓部には当時「夢のパワーユニット」だった3ローター型のロータリーエンジンを搭載していました。市販車では全くなく、あくまでもメルセデス・ベンツの実験試作車として、ロータリーエンジンやターボディーゼルエンジンなどを搭載してC111シリーズ(I、II、IID、III、IV)が数々の記録を打ち立てていったプロセスを紹介します。

コンピューター上で設計された世界初の車両だった

メルセデス・ベンツは、1960年代初頭からすでにドイツ人のフェリクス・ハインリッヒ・ヴァンケルが開発したロータリーエンジンの開発に取り組んでいた。これと並行して、かの有名なブルーノ・サッコが考案し、1964年にメルセデス・ベンツのデザイナー、ジョルジオ・バティステラがデザインしたミッドシップエンジン「SLX」スーパースポーツカーなど車両のデザインも製作された。1966年4月には、このSLXスーパースポーツカーの1/1デザインモデルはウンタートルクハイムの大型風洞で測定が行われた。このプロジェクトはこれ以上進められなかったが、C111のルーツのひとつを形成した。しかもいまではメルセデス・ベンツ・クラシックの車両コレクションにもなっている。

メルセデス・ベンツのエンジニアたちは大きな困難にもかかわらず、勇気とパイオニア精神でロータリーエンジンをさらに開発し続けた。1967年、開発責任者のハンス・シェレンベルク博士は、ロータリーエンジンの燃料消費量が同じ容積のレシプロV型エンジンよりも約50%高いと報告した。そこで1968年11月、「C101」のプロジェクトの名のもとにロータリーエンジンを搭載した次世代車両を本格的に開発した。

この本格開発陣は乗用車開発責任者であるルドルフ・ウーレンハウトが担当し、プロジェクトマネージャーはプレ開発の責任者であるハンス・リーボルト博士が務めた。魅力的なデザインはヨーゼフ・ガッツェンデルファー率いるチームによって生み出され、開発前からスタイリング部門に移行したばかりのブルーノ・サッコはこの壮大な次世代車両のボディ開発をコーディネートした。

特筆すべきは、単に未来的な形状にデザインするのではなく、コンピューター上で設計された世界初の車両であった。つまり、エンジニアたちはメルセデス・ベンツで開発した有限要素法(FEM)の変形であるESEM法(弾力静的要素法)を使用した。デジタル技術により、動的荷重の計算も可能になった。メルセデス・ベンツは、この手法により開発期間が約4カ月短縮可能になったとしている。

ウンタートルクハイムの風洞空力テストで完成した最初の実験試作車の初テスト走行は、1969年7月15日にホッケンハイムリンクで実施された(ボディは白)。その後ダイムラー・ベンツ社の取締役会は、この実験試作車を1969年9月のフランクフルトモーターショー(IAA)で「C111(シー・ワンイレブン)」の名称で一般公開することを決定した。なぜなら、プジョーが商標登録した中央の数字に0を付けるモデル名との競合を回避したからであった。

 C111-I:600ccの3ローターで280馬力、260キロを誇った

1969年9月11日~21日まで開催されたフランクフルトモーターショー(IAA)で発表された最初のC111-Iは、600ccの3ロータリーエンジンを搭載した楔型の2ドアクーペでドアが伝説の300SLのガルウイングタイプ。ロータリーエンジンと並行して、このC111-Iはガラス繊維強化プラスチック(GFRP)のボディ、接着剤の接着やリベット留めの接合技術など、量産車では限られた範囲でしか実現されていなかった技術がテストされた。C111-Iの象徴なキャラクターは、メタリックオレンジの珍しい塗装仕上げによって強調されていた。ワイン造りに由来する「ヴァイス ヘルプスト(ドイツ語Weissherbst=白い秋)」という名称は、人気のあるワインの輝くオレンジ/ロゼのカラーを意味していた。

なお、このフランクフルトモーターショーのデモンストレーション車両として使用された最初の車両は、まだ白い塗装であったが、後に同様の「ヴァイス ヘルプスト」のメタリックオレンジに塗り直された。

エンジンはインジェクション式の600ccの3ローターでMRレイアウト。最高出力は280ps、最高速度は260km/hであった。フロントサスペンションはダブルウィッシュボーン式独立懸架のノンパラレルピボット、アンチダイブデバイス。リアサスペンションはレーシングカータイプ独立懸架の左右各3トランスバースリンク、2トレーリングリンクであった。

このようにセンセーショナルなデビューを飾ったC111-Iは、パリモーターショー、ロンドンモーターショー、トリノオートショーなど、数多くのモーターショーや見本市に出展された。裕福なスポーツカー愛好家の間では、C111-Iに対してかなりの金額を支払う準備ができていた。例えば、1969年のロンドンでは、自動車愛好家がすでに最大50万ドイツマルクの支払いを申し出た。さらに空白の小切手は、その後数カ月にわたってシュトゥットガルトに配達された。しかし、メルセデス・ベンツはC111-Iが実験試作車で決して販売しないことを明確にした。

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