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70年代には最高速400キロを超えていた! ガルウイングのメルセデス・ベンツ「C111」は数々の世界記録を樹立…ロータリーからディーゼルにV8モデルまでを紹介します

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TEXT: 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)  PHOTO: Mercedes-Benz AG

C111-II:4ローターで350馬力・300キロを実現するが……

メルセデス・ベンツは「C111」(以下、後続との区別のためC111-Iと呼ぶ)の発表から約半年後、1970年3月12日から22日まで開催されたジュネーブモーターショーで早くも600cc・4ローターのロータリーエンジンを搭載した「C111-II」を発表した。

第2開発段階として、ロータリーエンジンの開発と新技術のテストの実験試作車C111-IIは4ローターを搭載し、最高出力は350ps、最高速度は300km/hを発揮、0-100km/h加速は4.8秒に向上した。ドイツ自動車新聞『Deutschhe Auto-Zeitung』は「息を呑むような車」と述べた。また、雑誌『ホビー』はC111-IIをタイトルページに載せ「ウンタートルクハイムの4ローターロケット」と表現した。

全高わずか1120mm、ガルウイングドア、ホイールベース2620mmのC111-IIは、改良されたガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製のボディが、シートスチール製のアンダーボディに組み込まれた。技術面では、とくに純正のスポーツエンジンであるクアッドローター・ヴァンケルエンジン(4ローターエンジン)が特徴である。

ブルーノ・サッコとヨーゼフ・ガッツェンデルファーが率いるデザイン部門は、すでに1969年夏に活動を開始していた。先代のC111-Iと比較して、マッドガード、ルーフ、トランクリッドを変更し、ドライバーの視界を改善した。エアロダイナミクスも合理化され、風洞測定では車両の抵抗が先代のC111-Iと比較して8%減少した。

とくに、C111-IIは多くの利便性を誇っていた。これはメルセデス・ベンツ乗用車開発部長のルドルフ・ウーレンハウトにとってとくに重要であった。インテリアは日常的な使用への適合性が印象的で、エアコン、シガーライター、灰皿、ベッカーのカーステレオも装備された。さらにリアのトランクには、メルセデス・ベンツ専用の大きなスーツケース1つと小さなスーツケース2つが収納できた。

しかし、1967年に開発責任者のハンス・シェレンベルク博士が、ロータリーエンジンの燃料消費量が同じ容積のレシプロV型エンジンよりも約50%高いと報告していたことが現実となった。1973年の第1次オイルショックにより、ロータリーエンジンの燃費性能が問題視された。加えて、シールの耐久不足や製造コストなどの問題でC111のロータリーエンジンの開発は打ち切られた。そして、C111-IIは当時のダイムラー・ベンツ社のミュージアムの倉庫に保管された。現在ではこのC111-IIはメルセデス・ベンツ・ミュージアムの「技術の魅力」展示コーナーで展示されている。

C111-IID:ターボディーゼルを搭載して長距離の世界記録を達成

メルセデス・ベンツがロータリーエンジンの開発を中止した後、1976年にC111-IIは新しい5気筒ディーゼルエンジンの実証テストに使用することになり、ミュージアムの倉庫から持ち出された。

新たな5気筒ディーゼルの性能と耐久性を実証するために、メルセデス・ベンツはまず「240D」を改造したセダンボディでいくつかのディーゼル速度記録を樹立した。開発チームはこの時に手ごたえを得た。その5気筒ディーゼルにターボチージャーを組み合わせることでさらなるパワーアップの可能性が残されており、倉庫から持ち出した空気抵抗の小さいC111-IIに開発チームは190psまでパワーアップした5気筒ターボディーゼルを搭載し、最高速度260km/hを発揮させた。

こうして生まれ変わった「C111-IID」は、1976年6月12日~14日にかけてイタリアのナルドサーキットで64時間世界速度記録に挑戦した。3Lディーゼルクラスのあらゆる世界記録を樹立するとともに、最終的には1万マイル(約1万6000km)を平均速度251.6km/hで走破。この1万マイルを含め、その途中の1万km、24時間においても世界最高記録を達成した。ちなみに、これらの長距離記録は、あらゆる自動車を含めての絶対的な自動車世界記録であった。

C111-IとC111-IIは合計12台製造され、最後の1台がこのC111-IIDであった。C111-IとC111-IIの各1台には一時的にM116型3.5L V型8気筒エンジンが搭載され、テスト車両として使用された。また2014年には、C111-IIの1台にM116型エンジンを搭載したモデルが製作され、実走行可能なデモカーとして、メディアの取材などで活用された。

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