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メルセデス・ベンツのEVコンセプト「ビジョン ワンイレブン」とは? 伝説の実験試作車「C111」をオマージュした新時代へのマニフェストでした

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TEXT: 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)  PHOTO: Mercedes-Benz AG

  • 2023年6月、北米デザインセンターで全電動パワートレインの新しいコンセプトカー「ビジョン ワンイレブン」が発表された。シートに座るのは最高デザイン責任者であるゴルデン・ヴァゲナー
  • ビジョン ワンイレブンはリアに2基のYASAモーターを搭載して、左右の後輪を駆動し、左右後輪の駆動力を個別に制御可能であるので、ハイパワーでもスタビリティを確保。フロア下にはバッテリーを搭載
  • ビジョン ワンイレブンのスタイルは、ワンボウのデザインを巧みに表現しているのが特徴。サイドウインドウにボディカラーと同色を施し、外側から不透明でピクセル化されたパターンでカモフラージュされたウインドウをボディと見事に融合させている
  • ビジョン ワンイレブンのスタイルは、伝説のガルウイングドアとワンボウのデザインを巧みに表現しているのが特徴で「カッパーオレンジ」と呼ばれるアルビーム塗装は、光によって変化し鮮やかさと深みを増している
  • ビジョン ワンイレブンの技術的なハイライトは、YASA社が開発した非常に強力で高効率の軸方向磁束モーターで、同じ出力で比較すると従来のモーターに対して軸方向の長さが1/3とコンパクトで薄型である
  • 1969年、ホッケンハイムリンクでテスト走行中のメルセデス・ベンツ最初のC111。当初のボディは白だった
  • ロータリーエンジンを搭載したメルセデス・ベンツC111-Iのプロトタイプである「ホーベル」は、ウンタートルクハイムの90度テストバンクを疾走中。当初のボディは白だった
  • メルセデス・ベンツは1970年3月12日から22日まで開催されたジュネーブモーターショーで600ccの4ローター・ロータリーエンジンを搭載したC111-IIを発表
  • メルセデス・ベンツは1970年3月12日から22日まで開催されたジュネーブモーターショーで600ccの4ローター・ロータリーエンジンを搭載したC111-IIを発表
  • 1976年6月、ナルドサーキットで5気筒ターボディーゼルを搭載して64時間世界記録に挑戦中のC111-IID
  • C111-IIにV型8気筒ガソリンエンジンを搭載した個体。写真は2022年、ロサンゼルスでのドライビングショット
  • 1978年4月30日、C111-IIIはイタリアのナルドサーキットで連続12時間にわたるレコード走行で、見事に9つの世界記録を樹立した
  • 1978年のC111-III。同年に撮影した写真
  • C111-IVはさらなる空力性能向上のためにフロントスポイラーと飛行機の水平尾翼の2枚のリアウイング、垂直尾翼状の2枚のフィンが取り付けられた。写真はウンタートルクハイムのテストコース
  • ポール・フレール、グイード・モッホ、ハンス・リーボルト、それにリコ・シュタイネマンの4人のドライバーが駆るC111-IIIが9つの世界記録を樹立
  • ビジョン ワンイレブンのインテリアは、ダッシュボードなどの大きな表面はハイルックスのハニカム構造を示す白い生地で装飾してあり、素材は100%リサイクルポリエステルで作られている。室内幅いっぱいに水平に広がるインパネにはドット表示のディスプレイをビルトイン
  • ビジョン ワンイレブンはその名が示す通り、伝説的な実験試作車C111へのオマージュであり、次世代のメルセデス・ベンツが目指す「アイコニック・ラグジュアリー」の方向性を示している。伝説のC111とビジョン ワンイレブンの2台展示
  • ビジョン ワンイレブンは、ダイナミックなガルウインングドアと革新的な全電動パワートレイン技術を組み合わせている。オレンジのアルビーム塗装と黒の塗装により、今日のデザインアイコンとなっている

300SLと並ぶメルセデス・ベンツのデザインアイコン「C111」

1969年にデビューしたメルセデス・ベンツ「C111」は、伝説の「300SL」を彷彿させるガルウイングドアを持つミッドシップ2シーターで、心臓部には当時「夢のパワーユニット」だったロータリーエンジンを搭載していました。市販車では全くなく、あくまでも実験試作車であったC111をオマージュして2023年に発表されたコンセプトカー「ビジョン ワンイレブン(Vision One-Eleven)」を紹介するとともに、そこに込められたメルセデス・ベンツの想いを読み解いていきます。

ガルウイングと「ワンボウ」デザインをダイナミックに再解釈

2023年6月、メルセデス・ベンツは、北米デザインセンターで新しいコンセプトカーを発表し、同年ミュンヘンで開催されたIAAモビリティにも出品した。ビジョン ワンイレブン(Vision One-Eleven)はその名が示すとおり、伝説的な実験試作車「C111」へのオマージュであり、次世代のメルセデス・ベンツが目指す「アイコニック・ラグジュアリー」の方向性を示すものである。ダイナミックなデザインと革新的な全電動パワートレイン技術を組み合わせている。もちろんフロア下にはバッテリーを搭載している。

スタイルは、メルセデス・ベンツのシグネチャーである「ワンボウ」のデザインを巧みに表現しているのが特徴である。つまり、1本の弓なりのカーブでシルエットを形成する特徴を受け継ぎ、全高は1170mmと非常に低い2シーターに仕上げている。22インチの大径ホイールをシームレスに納めて大きく盛り上がった前後のフェンダーがダイナミックであると同時に、低車高感を強く打ち出している。

また、非常にエアロダイナミックなミッドシップのビジョン ワンイレブンは、独特のガルウイングドアと目を引くオレンジのアルビーム塗装と黒の塗装により、今日のデザインアイコンとなっている。この「カッパーオレンジ」と呼ばれるアルビーム塗装は、メタリック層の上にカラー層を重ね塗りすることで、C111よりもパワフルで、光によって変化し鮮やかさと深みを増している。さらに、サイドウインドウにこのボディカラーと同色を施し、外側から不透明でピクセル化されたパターンでカモフラージュされたウインドウをボディに見事に融合させている。

インテリアデザインではダッシュボードなどの大きな表面はハイルックスのハニカム構造を示す白い生地で装飾してあり、素材は100%リサイクルポリエステルで作られている。室内幅いっぱいに水平に広がるインパネにはドット表示のディスプレイをビルトインしている。

メルセデス・ベンツの「アイコニック・ラグジュアリー」を象徴

メルセデス・ベンツの最高デザイン責任者であるゴルデン・ヴァゲナー(Gorden Wagener)は、次のように語っている。

「メルセデス・ベンツの目標はスタイリングすることではありません。アイコンを作ることが私たちの目標です。300SLやC111のようなデザインアイコンは、どちらもガルウイングドア付きで、私たちのDNAの一部です。(中略)当社の全電動ビジョンカーは、当時アバンギャルドだったC111を現代風にアレンジしたものです。驚きの要素は、その非常にクリーンで純粋、そして同時に非常に筋肉質なプロポーションから来ています。このアイコニックな透明感はインテリアにも反映されています。同様に官能的でありながらミニマリスト的なデザインは、メルセデス・ベンツのアイコニック・ラグジュアリーを象徴しています」

とくに、技術的なハイライトは、電気モーターのスペシャリストである英国YASA社が開発した非常に強力で高効率の軸方向磁束モーターである。このYASA社は、2021年7月からメルセデス・ベンツ社の100%子会社である。同じ出力で比較するとYASAのモーターは従来のモーターに対して軸方向の長さが1/3とコンパクトで薄型である。この特徴を活かしてビジョン ワンイレブンはリアに2基のYASAモーターを搭載して、左右の後輪を駆動する。左右後輪の駆動力を個別に制御可能であるので、ハイパワーでもスタビリティを確保している。

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