クルマが停止していれば問題なし
運転中のスマートフォンは操作することだけではなく、注視し続けるだけでも違反なのは知ってのとおりです。注意力が散漫になり判断や操作が遅れれば、他者を巻き込む重大な事故に直結しかねません。ではスマートフォンを操作するときと同様、運転中の飲食などによる片手運転は許されるのでしょうか。
片手運転は安全運転義務違反
長距離のドライブに限らずドリンクホルダーに飲み物を置くのは当たり前だし、時間がないときはクルマで手短におにぎりなどを食べることだってあるだろう。正直いって心当たりのない人は少ないと思われるが、法律に照らし合わせると立派な違反になってしまう。
道路交通法第70条には、
「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」
と記載されている。
運転に慣れた人は「別に片手でも問題ないでしょ」と思うかもしれないが、冷静に考えればとっさのとき行動に支障をきたすのは当然。スマートフォンをカーナビ代わりに使い、頻繁にメッセージをやり取りする人が増え、それらに起因する事故が増えたため「ながら運転」の罰則が2019年に強化されたが、その前から事情にかかわらず片手運転が「安全運転義務違反」であるのは一緒なのだ。
引かれる点数は2点! 反則金は普通車で9000円
そもそもドリンクホルダーなんてほとんどのクルマに標準装備で、これが違反の助長ではないかと考える人もいるかもしれない。答えはいたって簡単。信号待ちなどでクルマが停止しているときに飲めばいいだけだ。運転中の飲食そのものを禁止する法律はもちろん存在しないし、スマートフォンも「当該自動車等が停止しているときを除き」と、クルマが完全に停まっている間であれば違反にはならないのだ。もっとも飲み食いに集中しすぎて青信号になったのを見落とすのは論外で、焦って周囲の安全を確認せずに発進するのも論外なので十分に気を付けよう。
ちなみに安全運転義務違反で取り締まりを受けると、引かれる点数は2点で反則金は普通車で9000円となる。また大型車は1万2000円で2輪車は7000円、原付は6000円。なお、マニュアル車のシフト操作などごく短時間の片手は、さすがに違反とはならないので焦らず操作するようにしたい。
最後に参考として、運転中にスマートフォンを操作した際の罰則を。道路交通法第71条5の5では、
「自動車、原動機付自転車又は自転車を運転する場合においては、当該自動車が停止しているときを除き、携帯電話使用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置を通話のために使用し、または当該自動車等に取り付けられもしくは持ち込まれた画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと」
とあり、普通車の罰則は携帯電話を保持するだけでも3点と1万8000円、そして6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金とかなり厳しくなる。
事故など交通の危険を生じさせた場合はさらに重く、減点6と1年以下の懲役または30万円以下の罰金だ。飲食であろうとスマートフォンであろうと、片手運転は注意力や操作の正確さを損ない、重大な事故に繋がる危険な行為と覚えておこう。