「エコ」重視の姿勢がじつはオシャレ!?
太田哲也さんが日本カー・オブ・イヤーの10ベストに残ったボルボ「EX30」に試乗しました。BEVのEX30はクルマを走らせる前から、すでにいろいろ考えさせられるものがあったようです。太田哲也さんがシートに座ってEX30から感じ取ったこととは……?
ボルボが描くサステナブルの未来
ボルボの新型ピュアエレクトリック・コンパクトSUV「EX30」に試乗してきた。電動化が進む自動車業界の中で、このクルマはどんな未来像を描いているのか。
正直に言えば、最初はそれほど興味をひかれなかったのだが、実際にハンドルを握ってみてその「哲学」に触れることができた。「サステナブル」というテーマがクルマ全体に貫かれていることに気づいたからだ。このクルマが掲げるテーマは「コンパクト」と「サステナブル」。電動化が進むなか、多くのメーカーが持続可能性を謳うが、「EX30」はその理念をいち早く具体的かつ徹底的に体現していた。
サステナブルな素材で描かれる北欧デザイン
EX30の最大の特徴は、そのデザインそのものがサステナビリティを象徴している点だ。デコラティブ・パネルには再生プラスチックを使用し、アルミニウムの25%、鉄鋼とプラスチックの17%がリサイクル素材だという。さらに、シートや内装には自然素材やリサイクル可能な素材が使われている。
興味深いのは、こうした素材使いが単なる「エコ」を超え、デザイン性に昇華されていることだ。無塗装のプラスチックと聞けば、安っぽさを連想するが、「EX30」のインテリアは、あえてミニマムなデザインと自然素材の組み合わせによって、北欧らしい洗練された空間を生み出している。この仕上がりを見ると、サステナブルであることが単なる義務ではなく、一種の美学として確立されているのだと感じさせられる。
環境負荷削減への本気度
ボルボは「廃棄物の削減と根絶」を掲げ、EX30をその象徴的なモデルに仕立てている。試乗中に聞いた話でとくに印象的だったのは、インテリアに使われている廃棄プラスチックのチップだ。EX30が目指すサステナビリティは、単なる素材のリサイクルにとどまらない。この取り組みを知ったとき、僕自身、「そこまでやる必要があるの? ゴミをわざわざ貼り付けなくても……」と思ってしまったが、それこそが「サステナブルな社会の実現に向けて頑張っていますよ」というメーカーの姿勢を示すのだ。
このクルマのオーナーが持つ意識の高さは、社会全体でプラスチック問題を考えるきっかけになるだろう。またヨーロッパでは、この「エコ」重視の姿勢が「オシャレ」として受け入れられているという点も興味深い。日本ではまだ「エコ=自己満足では?」という感覚があると思うが、EX30を目の当たりにすると、これが未来に向けた標準となるのだろうと気づかされる。
サステナブルを選ぶ価値
EX30を選ぶことは、単に移動手段を得るだけではなく、サステナブルな未来への具体的な道筋だ。持続可能な社会に貢献するという選択肢。
その価値をどう捉えるかは、購入者ひとりひとりの判断に委ねられているが、EX30を手にすることは、自身が未来に貢献する一歩になると思えた。
■太田哲也さんのコラムはこちら
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