リトラクタブル・ヘッドライトを装備する12気筒の高級クーペ
名車と呼ばれるクルマが数多く存在するBMWの中で、20世紀のビックスターと呼ばれたのが初代E31系「8シリーズ」です。スーパーカーブームを経験し、ランボルギーニ「カウンタック」やフェラーリ「512BB」を見て衝撃を受けた世代にとっては、リトラクタブル・ヘッドライトはある意味でスーパーカーの証。今回は、当時のハイソサエティな人達の心を掴んだ8シリーズに乗るオーナーに話を聞きました。
青春時代に一斉を風靡した8シリーズを衝動買い
BMW初のスーパーカー「M1」に似たデザインに加えて、美しいボディラインにリトラクタブル・ヘッドライトを備えた8シリーズは「世界一美しいクーペ」と称され、「6シリーズ」の後継ラグジュアリークーペとして1990年にデビュー。そのルックスの良さからさまざまなドラマやPVにも登場し、中でも筆者が思い出すのは鈴木雅之&菊池桃子が歌った『渋谷で5時』のPV映像。そのカッコいいフォルムはスターが乗るクルマとしてふさわしかった。
ここで紹介するオーナーも、その時代に青春を過ごしていた人物だ。購入は今から20年ほど前で、たまたま近所の中古車販売店で見かけたE31型「850Ci」のスタイリングに惹かれて衝動買い。それまでは国産車ばかり乗っていたそうだが、年齢的にもそろそろ外車に乗った方がクルマ好きの素敵な大人に見えるかな……なんて理由で選んだという。
この850Ciが搭載するエンジンは「M70」型の5L V型12気筒だ。当時は、シルキーシックスと呼ばれた直列6気筒エンジンをV型仕様の発想で搭載させたユニットなんて言われた。そのためかコンピュータは複雑な2系統制御システムが組み込まれ、トラブルが多く、メンテナンス性も悪いことから手間のかかるクルマとの悪評も。その影響なのか、後に4.0L V型8気筒エンジンを搭載した「840Ci」が登場。トップグレードではないもののトラブルが少ない理由から人気車種となり、BMWの頂点に君臨する8シリーズとしての信頼性を高めた。
トラブル続きに苦戦することも
じつは筆者もV12気筒エンジン搭載の「850i」を所有していた時期がある。その時にもさまざまなトラブルに悩まされた。エアフロメーター不良からはじまり、点火系不良、ウォーターポンプ破損、セルモーター故障、エアコン故障等々……。このクルマにはドライブコンピューターがセンターコンソールに付いていたが、つねにエラー表示が出ていた状態だった。
よく点検してみてわかったのが、じつは1気筒だけ圧縮比が低かったらしく、これもトラブルの引き金になっていた。ただ、12気筒あるうちの1気筒なので、実際に乗っているとこれといった問題はなく走っていた。ある意味でタフなのもしれないが、良くも悪くもといった感じであった。
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