現在までの走行距離は1万7873キロ
2024年10月26日にRMサザビーズが米国ロサンゼルスで開催した「ザ・ルディ・クライン・コレクション」オークションにおいてメルセデス・ベンツ「300SL ロードスター」が出品されました。この300SLはデビュー初年である1957年にデリバリーされたもので、ギアボックス以外はナンバーマッチングしている1台でした。
モータースポーツでも高い性能を発揮した
メルセデス・ベンツの歴史を語るうえで欠かすことのできない存在といえるのが、1952年に誕生した軽量スポーツカーの「300SL」だ。SLとは「Super Leicht」、すなわちドイツ語で超軽量を意味する称号であるが、たしかにそのスペースフレームの構造などを見れば、開発時に軽量性がいかに重要な目標として掲げられていたのかは容易に想像できる。
特徴的なガルウイング・ドアも、このスペースフレームのサイドシルが高く、ワイドであることが採用の直接の理由だった。そして300SLには170psの最高出力を誇る、3Lの直列6気筒エンジンが、車体の中心線から左方向に45度傾斜して搭載され、ボディのエアロダイナミクス向上にも大きく貢献した。ちなみに300SLのプロトタイプが可能とした最高速は240km/h。そして1952年にはモータースポーツの世界でも、300SLは圧倒的な強さを発揮したのだ。
ロードスターはフレームから再設計された
だがメルセデス・ベンツは、1953年にはワークス体制でのモータースポーツ活動を中止。それは300SLの市販バージョンたる「300SL ガルウイング クーペ」と「190SL ロードスター」を市場に投入することに集中したため。さらに1957年になると、300SL ガルウイング クーペの実質的な後継車となるオープン仕様の「300SL ロードスター」がデビュー。フレームから再設計されたロードスターには、すでにガルウイングドアの必要性はなく、一般的な開閉可能なサイドウインドウ付きの横開きドアが装備され、同時にサイドシルの高さも格段に低くなった。
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ギアボックス以外はナンバーマッチング
今回RMサザビーズの「ザ・ルディ・クライン・コレクション」、別名「ザ・ジャンクヤード」オークションに出品された300SLは、デビュー初年である1957年にデリバリーされたもの。ナンバーマッチングの結果は、シャシーナンバー、ボディナンバー、エンジンナンバー、リアアクスル、ファイアーエンジンレッドのボディペイント、クリームレザーのインテリアカラーなどは一致したものの、ギアボックスはある時点で交換されたようだ。
参考までに1957年にデリバリーされた300SL ロードスターは554台しか存在しないが、このシャシーナンバー「7500173」はさらにその中でも30台にしか装着されなかったモータースポーツ用のラッジ・ホイール(センターロック・ホイール)仕様。ホイールにはきちんとメルセデス・ベンツの記録簿と一致する装着日付コードが表示されており、このモデルが間違いなくその30台の中の1台であることを証明している。
走行距離は実走行?
オドメーターに刻まれた、現在までの走行距離は1万7873km。ジャンクヤードに保管されていた期間を考えると、この数字もオリジナル走行距離である可能性は十分に高い。
この1957年式メルセデス・ベンツ・300SL ロードスターをジャンクヤードから解放し、フルレストアの作業を経た後に、ショー・フィールドに並べることを目指すコレクターにとって、今回のオークションは非常に魅力的なものに映ったようだ。
オークショネアーズのRMサザビーズが掲げたエスティメート(推定落札価格)は80万〜100万ドル(邦貨換算約1億2184万円〜1億5230万円)。これに対して落札価格は、じつに118万7500ドル(同1億8085万円)という数字にまで跳ね上がった。ちなみにこの金額は、今回のオークションでは6位にランクされるものであった。
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