ビスポーク注文の多いモデル第1位はファントム エクステンデッド
なかでも「ファントム エクステンデッド」は、1年を通じて最も幅広いビスポークの注文を受けたモデルである。また、2024年に納車が本格化した「スペクター」は、1台あたりのビスポークの内容が2番目に高いレベルを記録した。地域別では、1台あたりのビスポークの平均価格が最も高かったのは中東で、北米と欧州がこれに僅差で続いた。
ロールス・ロイスのビスポークの頂点を極めるコーチビルドは、2024年に「アルカディア ドロップテイル」を発表した。これは、4台のコーチビルド・ドロップテイルの傑作のうちの1台で、同社が過去に製作した「スウェプテイル」と「ボートテイル」に続くものだ。
比類なき顧客体験を提供
ロールス・ロイスのビスポークへのこだわりは、グッドウッドで高度にパーソナライズされた体験を世界中の顧客に直接提供するプライベートオフィスにも反映されている。2024年には、既存のドバイと上海のオフィスにニューヨークとソウルが加わり、このVIPスペースのグローバル・ネットワークが拡大した。
グッドウッドにあるオリジナルのプライベート・オフィスにインスピレーションを得たこれらのクリエイティブなハブは招待制で、各拠点に専属のデザイナーおよびクライアント・エクスペリエンス・マネージャーが常駐し、顧客と緊密に連携しながら創造的なコラボレーションをする。この特別な体験は顧客から高く評価されており、ロールス・ロイスのビスポークの可能性を最大限に活用できることから、プライベート・オフィスでのオーダーは通常よりも25%高いものとなっている。
AMWノミカタ
3億ポンドの設備投資が生産台数を増やすためのラインの追加などではなく、ビスポークやコーチビルドに対応するための投資が主であることに驚く。ロールス・ロイスはビスポークにいち早く鉱脈を見つけ、それを突き詰めてきた。その素材選びから製造技術まで、他ブランドを寄せ付けない圧倒的な力は誰もが認めるところだろう。
そしてその経験の積み重ねが、1台あたり25%も高く販売できる価値を生み出す。ちょっとしたオリジナルの刺繍や特別色を提供する程度のビスポークでは肥えた顧客の目は欺けない。そのことを当然知っているロールス・ロイスは世界中にプライベート・オフィスを展開し、最も要求レベルの高い顧客の難しい注文を受ける「挑戦の場」として活用している。カスタマーと真剣に向かい合い、自らの技術力を高めるためのいわば「出稽古」を積み重ねているのである。今回の3億ポンドの投資の先には、他ブランドをさらに引き離すどのような秘策が隠されているのか楽しみである。