クルマを文化する
REAL CAR CULTURE

AUTO MESSE WEB

クルマを文化する
REAL CAR CULTURE

AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

  • TOP
  • CLASSIC
  • 1153万円とお買い得だったシボレーC1「コルベット」…新車時からの4速MTにオリジナリティを保持したまま整備された個体でした
CLASSIC
share:

1153万円とお買い得だったシボレーC1「コルベット」…新車時からの4速MTにオリジナリティを保持したまま整備された個体でした

投稿日:

TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2024 Courtesy of RM Sotheby's

スペックは最高の1台ながら、売り手側には厳しい価格に……

2024年秋、RMサザビーズ「The Ron and Sarah Jury Grand National Collection」オークションに出品された「ポロ・ホワイト」の1957年式コルベットは、「フューリー(Fuelie)」の愛称で知られるフューエルインジェクション付きV8エンジン搭載車であることを示す「VEコード」を正規に有する1台。シボレーが誇る250ps(SAE)の燃料噴射つき283キュービックインチ(約4.6L)のスモールブロックV型8気筒エンジンを、67年前の新車時から搭載していたとのことである。

このクルマの生い立ちについてはほとんど知られていないが、ペンシルべニア州スクラントンの個人自動車博物館から、キーストーン州在住の愛好家仲間によって購入されたと伝えられており、彼はその後28年間にわたって大切に維持・保管してきたという。

このC1が愛情をもって整備されてきたことは、2017年にペンシルベニア州ウェストチェスターの「カウンティ・コルベット」社によって2万ドル以上の費用を投じて行われた整備を含む、数十年にわたる整備請求書からも明らかである。同社の大規模な作業項目には、難物として知られるロチェスター燃料噴射ユニットの完全なリビルドも含まれていた。

いっぽう、コルベットのポロ・ホワイトのエクステリアを引き立てているのは、印象的なレッドの内装と、ブラックのコンバーチブル・ソフトトップ。そして、ボディ同色とされたポロ・ホワイトの純正ハードトップがマッチしている。

室内には「ワンダーバー(Wonder Bar)」プッシュボタン式カーラジオ、ザックリとしたヤシ繊維で織られた赤い「ココ」フロアマット、ダッシュ上のバックミラー、革シボが施されたビニール内装などが装備され、そのアメリカンクラシック感横溢の魅力に貢献している。

オリジナリティを保持したままメンテナンスされてきた

しかしこの個体でなにより特筆すべきは、1957年モデルから追加され、マニアがもっとも切望する4速スティックシフト(マニュアル)トランスミッションが、新車の段階から組み合わされていたことであろう。

現在のコレクションに2021年からくわわったこのコルベットは、2024年に右ドアとフロントバンパーのバーを適切なアライメントに調整し、フロントシートやその他の付属品を改修・修理するなど、入念な手入れが施されている。

時代考証などお構いなしでセンスを疑うような改造が施されたり、「ガレージの女王」のごとく飾り物のように展示されたりしている多くのC1コルベットたちとは異なり、完璧なオリジナリティを保持したままメンテナンスされてきたこの個体は、さらなるドライブの楽しみのためにしっかり整備されており、RMサザビーズ公式ウェブカタログ内では「アメリカン・スポーツカーの真髄ともいえる希少で望ましいバージョンを所有する素晴らしい機会を提供させていただきました」という宣伝文句を添えて、8万5000ドル~10万ドル(当時のレートで約1292万円〜1520万円)というエスティメート(推定落札価格)が設定されていた。

ところが、10月31日の入札開始から1週間を経た11月6日になってもビッド(入札)は7万5900ドルまでしか上がらず、この時点で締め切り。現在のレートで日本円に換算すると、約1153万円で落札されることになったのだ。

ここ数年の1957年式C1コルベットのマーケットにおける相場を調べてみると、おおむね今回のエスティメートに近い価格帯で推移していることから比較すると、このオークションにおけるハンマープライスは、売り手にとっては不本意、落札者にとってはお買い得というものだったようだ。

12
すべて表示
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
著者一覧 >

 

 

 

RECOMMEND

MEDIA CONTENTS

WEB CONTENTS

 

 

 

人気記事ランキング

MEDIA CONTENTS

WEB CONTENTS

AMW SPECIAL CONTENTS