新しくなったドブロに試乗
ステランティス ジャパンは2024年12月5日、フィアット「ドブロ」のマイナーチェンジモデルを発表しました。2023年5月に日本で発売されたドブロは、「趣味を堪能するオトナの遊びゴコロを楽しめるクルマ」として、ファミリーをはじめアクティブなライフスタイルの人々に選ばれてきました。新しくなったドブロにモータージャーナリストの島崎七生人氏が試乗。その魅力に迫ります。
欧州のフルゴネットがルーツ
昔話かつ自分ごとで恐縮だが、1980年代のRVブームの頃の僕はまだ20代の駆け出しの編集者で、35-105mmのズームレンズを付けたフィルムカメラのキヤノンNew F-1モータードライブ付きを首から下げ、富士山麓近辺のオートキャンプ場へたびたび出かけた。いわゆるオーナー取材で、当時流行っていた1BOXを改造してキャンピングカーに仕立てたクルマとそのオーナーに会いにいくのが目的だった。
クルマを見せてもらうのもオーナーの話を聞かせてもらうのもじつに興味深く、休日出勤だったことも時間も忘れて取材していたのが懐かしい。が、今でも印象に残っているのは、そういうシチュエーションでオートキャンプを心底楽しんでいるご家族の“笑顔”だった。
取材途中に「コーヒー飲んでいきませんか?」などと誘われ、フォールディングチェアに座らせてもらい、ひとときその輪に加わらせていただくと、本当に楽しそうで自慢のキャンピングカーも家族ぐるみで大事にしていることがよくわかった。なのでその時、こういうのもいい趣味だなぁ、いつか取材する側ではなく取材される側になってみたいものだなぁ……と思ったのを、今回、新しいフィアット「ドブロ」に試乗しながら、ふと思い出した。
イメージでいうとプロユースっぽいメッセンジャーバッグか、多用途に使い回しが効く分厚い布地で出来たトートバッグといったところか。ドブロのようなタイプのクルマは“フルゴネット”と呼ばれるコマーシャルカーがそのルーツ。
日本への正規輸入こそされなかったものの、海外市場に投入された初代(2000年)、2代目(2010年)ともにじつは商用/乗用の両展開でやっていた。で、フィアットがステランティスの一員となり、同じグループのシトロエン「ベルランゴ」、プジョー「リフター」とともに一新、そのタイミングで登場したのが、今の3代目ドブロである。
往年のロゴから着想を得た斜線のマークを採用
試乗車は先ごろマイナーチェンジを受けたばかりの個体。白、黒、青と3色あるうちのシネマブラックと呼ぶ黒で、アルミホイールが黒であったり、新しい”FIAT”と”DOBLO”のロゴが艶消しのガンメタルグレーだったりするところから、なかなかスノッブなムードを漂わせていた。
フェイスリフト後も、兄弟車のベルランゴ/リフターに比べもともとシンプルだったドブロの顔つきについては、新型でも大きく変わらない印象。ただし往年(1980年代〜1990年代)のフィアット車で使われていた“斜線のマーク”が小さくレリーフであしらわれているのは、当時のフィアット車ユーザーの気持ちを引き寄せるためのもの? 初代「プント」に乗っていた僕も思わず「おっ!?」と目が行った。