プライベート・オフィス上海が監修した「ファントム ドラゴン」
ロールス・ロイスがプライベート・オフィス上海を通して、世界に1台の「ファントム ドラゴン」を発表しました。このモデルは中国の龍をモチーフにし、297個の寄木細工で構成されています。またスターライト・ヘッドライナーにも抽象的に2匹の龍が真珠と戯れる様子が表現されています。ファントム ドラゴンの詳細を見ていきます。
古代中国の伝説である2匹の龍と真珠を表現
ロールス・ロイス・モーターカーズは、辰年を祝した世界に1台のファントム ドラゴンを発表した。このクルマは中国の顧客からの依頼により製作され、東アジアの芸術や建築、文学で広く称えられている「2匹の龍と真珠」という古代中国の伝説を現代的に表現している。
ファントム ドラゴンは、伝統的な中国絵画をロールス・ロイスが繊細かつ深い知識に基づいて解釈し、そのブランド独自の創造的な個性を巧みに融合している。中国文化と国際的な美意識の融合は、とくに若い世代の消費者を中心において、重要な要素となっている。
卓越した木工技術により、龍が浮かんでいるように
インテリアのデザインは、3000年以上前にさかのぼる古代の伝説にインスピレーションを得ている。その伝説によると、2匹の龍が人間界の守護者として神々から神聖な真珠を贈られたという。龍たちは互いに譲り合い、その寛大さに感動した神々はさらにもう1つの真珠を授けた。その後、龍たちはその真珠を体内に吸収し、神として昇華した。龍は力と幸運の象徴であり、真珠は純粋さと完璧を象徴する。この2つの要素が組み合わさることで、陰と陽の調和のとれたバランスを意味する。
フロントフェイシアの全面にわたって配されるギャラリーには、297個のパーツと4種類の木材からなるビスポークの寄木細工が飾られている。このアートワークは2匹の龍と渦巻く雲、真珠を象徴する特注の時計が描かれ、制作に3カ月を要したという。
ベース層はスモークユーカリ材を使用し、幅わずか0.5mm幅のシェイプのアウトラインはシカモア単板で表現。雲のテクスチャーを模した自然な木目を持つアッシュバーで埋められている。そしてブラックボリバル材が影を表現し、龍が表面に浮かんでいるように見える。
スターライト・ヘッドライナーにも2匹の龍が出現
このファントム ドラゴンは、高光沢のスモークユーカリ材や、天然のオープンポア加工を施したスモークユーカリ材で仕上げたカナデルのドアパネルなど、卓越した木工技術により表現されている。また、前後のリクライニング・セレニティ・シートにはそれぞれアーデント・レッドとブラックのレザーを使用し、ヘッドレストには対照的なコットン糸で丁寧に刺繍された中国古来の書道による顧客のファミリーネームが添えられている。
スターライト・ヘッドライナーには768個の赤色と576個の白色のファイバーオプティクスを使用し、2匹の龍を抽象的に表現している。エクステリアは、アイスド・ダイヤモンドブラックというサテン仕上げの特別な塗装が施されている。
AMWノミカタ
中国で製作されるビスポークで龍というモチーフはありふれたテーマでこれまでもよく見てきたが、ロールス・ロイスの考える中国文化と国際的な美意識の融合という目的は、プライベート・オフィス上海が仲介することにより達成されたのではないかと思う。
とくに美しいのはフロントフェイシアのインレイである。ブラックボリバル材を使って影を作り、インレイが浮いて見える技法などはまさにロールス・ロイスのクラフツマンシップの技術力の高さを見せつける見事な仕上げである。ロールス・ロイスはビスポークでのオーダーに着眼し、本社施設の拡充や、プライベートオフィスの拡大を続けている。
彼らの考える新しいラグジュアリーの形とは、そのプロセスも含んで顧客となにかを作り上げることにあるのではないだろうか。ビスポークオーダーによって顧客はブランドへの信頼感を高め、ブランドはお客様からの難度の高い要望から技術力を磨く。そんなポジティブなループがロールス・ロイスでは始まっている気がする。