長年にわたりBMW正規ディーラー内で展示されてきたヒストリー
さる2024年11月9日「The Iconic Sale at the NEC Classic Motor Show 2024」オークションに出品されたZ1について、アイコニック・オークショネアの公式カタログでは新車時から英国に至るまでの来歴については触れていない。
しかし、1972年から2024年まで英国ミッドランズ地域を中心に大規模なBMWディーラーネットワークを構築していた「ライデール/ライブルック」社が、BMWの発展における重要かつ興味深いマイルストーンとして2000年代初頭に入手したことは判明しているようだ。
ちなみにライデール/ライブルック社は2024年に売却され、現在では日本の「ニコル・グループ」と同様、アメリカの名門レースチームオーナー、ロジャー・ペンスキー氏が会長を務める「シトナー・グループ」の子会社になっているとのことである。
自信満々のエスティメートだったが……
現在でも、主にBMWディーラーやBMW関連のショー展示に供用されていることから、オークション公式カタログ作成時点での走行距離は、わずか3361マイル(約5380km)に過ぎない。
これまでつねに屋内保管され、定期的なメンテナンスを施され、年に1度の車検を受けている。したがって、オドメーターが示す走行距離は正しいものと保証できるうえに、新車からのオーナーはわずか2名に過ぎないとのこと。ただし、社名変更にともないV5C車検証の名義は変更されているという。
「この個体は、非常にスムーズな2.5Lライトシックスにマニュアルギアボックスを組み合わせた、このモデルの純粋な1台であり、この時代における“究極のドライビングマシン”のひとつであり続けている」と自社の公式カタログで謳っていたアイコニック・オークショネア社では、圧倒的に少ないマイレージに自信を得たのか、5万ポンド~6万ポンド(当時のレートで約945万円〜約1134万円)という、英国におけるこのモデルとしてもかなり強気のエスティメート(推定落札価格)を設定した。
ところが、バーミンガムNECの5号棟で行われた競売では、売り手サイドの期待していたほどにはビッド(入札)が進まず、終わってみれば4万3875英ポンド、当時のレートで日本円に換算すれば約829万円で、競売人のハンマーが鳴らされることになったのである。