じつはメリットばかりではない!?
雪道といえば4WDの独壇場。駆動輪が空転して前へ進まない2WDを尻目に、4WDが何ごともなかったように坂を登っていく、なんてシーンを見たことがある人もいると思います。北海道など雪が多く降る地域のレンタカーがほぼ4WDであることからも、FRやFFに対し大きなアドバンテージを有していることが理解できるはずです。雪道ではまさしく「最終兵器」と呼ぶにふさわしい4WDですが、はたしてデメリットになる要素はあるのでしょうか?
4WDの明らかなデメリットはボディの重さ
4WDは、フロントとリアのタイヤ4本に駆動力を分散して伝え、圧倒的なトラクション性能を誇る。雪道をはじめ、路面の状態が悪いときに威力を発揮するシステムだ。路面や天候に関係ないマイナス要素としては、燃費の悪さ。駆動力を分配させるパーツが必要なため重量が増し、当然ながら重くなった分だけ燃費も悪化してしまう。
さらに部品が多く構造が複雑なので価格も2WDより高くなる。また電子制御が著しく進化した現在ではだいぶ解消されたが、昔の4WDは前輪と後輪に回転差が発生するなどの理由で、コーナーでクルマが外へふくらむアンダーステアが強かった。
サーキットを連続で走るようなシチュエーションでは、高いトラクションによる立ち上がりの加速と引き換えに、重量増の影響でタイヤやブレーキのタレが早いのも弱点。とはいえ雪道で事故を起こさず安全に走れるなら、燃費が多少なりとも悪くなるのはガマンでき、常識的な速度であればアンダーステアとも無縁だ。4WDが2WDより雪道で明らかに劣るのは、ボディの重さによる制動距離の長さだろう。
下り坂はとくに注意
例えばサーキットで人気が高いHA36S型スズキ「アルトワークス」の場合、FFが670kgなのに対し4WDは720kgで、50kgと結構な差がある。痩せ型の大人ひとりと変わらない重量で、クルマの運動性能に影響しないわけがない。ただし平地や上りなら重さでタイヤを強く接地させ、トラクションを稼いでくれるのでむしろメリットだ。
問題はブレーキを踏んだとき。重いほど止まらないのはどんな路面も一緒だが、雪道の下り勾配ではその差がより顕著になる。参考にしたいのはJAFが行なった2WDと4WDの、圧雪路で急ブレーキをかけたときの比較テスト。平坦な路面では駆動方式による差はないに等しく、40km/hからのブレーキでどの車種も20〜22mで停止し、重量増の影響はそれほど大きくないように感じられる。
ところが下りになると制動距離の差は最大で10mを超え、4WDは止まりにくくなるので、余裕を持ったブレーキが必要なのは明らか。上りやフラットな路面なら4WDが雪道に強いのは間違いないが、下り坂ではその武器が一転してウイークポイントになってしまう。4WDは万能じゃないとしっかり理解し、雪道では余裕を持った運転を心がけて欲しい。