永遠の名作「RS8」は今も進化し続けている
カスタムカーのビッグイベント東京オートサロンに、日本におけるモータースポーツの草創期からアルミホイール界を牽引してきた「RSワタナベ」が出展。懐かしい定番デザインが進化した注目の新作ホイールを紹介します。
アルミホイール業界をけん引してきたRSワタナベ
国内の近代モータースポーツは、鈴鹿サーキットが完成した翌年の1963年に最初の日本グランプリが行われてから本格的にスタートしている。それに合わせるようにアルミ(軽合金)ホイールが注目を集めるようになった。
1960年代の後半から1970年代にかけて、まだ市販車にアルミホイールがライン装着されないばかりか、オプション装着もできなかった頃、クルマ好きの若者が、自分のクルマのスチールホイールをアルミホイールに交換するブームが到来している。
それを、大阪のハヤシカーショップ(ハヤシレーシング)とともにけん引したのが、横浜に本拠を構えるレーシングサービスワタナベ(RSワタナベ)だった。ホイールメーカーだった両社は、レーシングカー・コンストラクターおよびレーシングチームの立場から、ミニフォーミュラとして1970年代後半に絶大に人気を誇ったFL500レースでも覇を競い合っていた。
さらにRSワタナベは、1979年から国内でも始まったF3レースに協賛し、まだJAFが公認する以前にハヤシと、やはり大阪を本拠とするスピードスターとともに3社でオリジナル・コンペティション・ホイール・グループを結成。日本フォーミュラ・スリー協会の設立をバックアップした経緯がある。そしてその後も時にはライバルとして、また時に同志として切磋琢磨を続けながらアルミホイール業界をけん引してきた。
マグネシウムのフォージングRホイールが登場
そんなRSワタナベの代名詞となっているのが、8本のかまぼこ型スポークで構成された8本スポーク、型式名で言うと「RS8」だ。センターキャップにデザインされた、創業家の家紋に由来した「丸に三羽の鶴」とともに、アイデンティティとして確立されている。
1968年に登場したRS8は永遠のスタンダードとして現在でも同社のメイン商品となっており、最近も知人から「SR(フェアレディ2000)にRS8装着したんだ!」と嬉しそうな報告が届いたばかりだ。
ただしRSワタナベは定位置に安住しているのではない。RS8のデザインコンセプトを発展派生させた種々様々な8本スポークを次々と登場させ、さらには同じ8本スポークでもスポーク形状を直線的に仕立て直した「フォージングR(Forging R)」も誕生させている。
そのネーミングからも分かるようにフォージングRはフォージング(Forging=鍛造)ホイール。これは軽合金ホイールの大きな特徴である軽量さの進化に関して大きな一歩となった商品だ。そもそもホイールの軽さに関しては、アルミからマグネシウム(合金)に素材を置換し、製造法でも鋳造から鍛造へとトライを続け、現在ではマグネシウム(合金)製の8本スポークやアルミ(軽合金)製の鍛造ホイールもラインナップし、さらにマグネシウム(合金)の鍛造製8本スポークもすでに完成、今回の東京オートサロンにも参考出品していた。
多くのクルマにジャストフィットするホイールを手に入れることができる
ところでアルミホイールは、ホイール径とリム幅といったサイズだけでなく、オフセット(インセットとも)という重要なスペックがある。これはホイールのリム幅中心からディスク面までの距離で、プラス側にすれば、同じリム幅でもホイールはホイールハウスのより内側に納まり、ステアリングの操舵力は軽くなるが、ハンドリング特性はアンダーステア傾向になる。
その反対にオフセットをマイナス側に振るとホイールはより外側に張り出すことになり、結果的にトレッドが拡がって操舵力は重くなるけれど旋回性能が高くなってオーバーステア傾向のハンドリング特性になる。だから厳密に言うと、ホイールもセッティング要素のひとつということになる。
RSワタナベの各種の8本スポークは、リム径とリム幅が同じでも数種のインセットがラインナップされているが、さらにホイールによってはディスク部分を加工してインセットの移動が可能となっている製品もあるから、まさにより多くのクルマにジャストフィットするホイールを手に入れることができるわけだ。さらに、かつてハヤシレーシングから独立して誕生、3ピースホイールのパイオニアとなったワーク(WORK)とのコラボでRS8を3ピース化した「RS8R」も登場している。
フェアレディ240ZRのレース専用ホイールが復活
そんなRSワタナベだが、最近の新製品にも注目だ。まずはかつて日産のワークスチームで「フェアレディ240ZR」に使用していたレース専用ホイールが、「ゴッティマグ」として商品カタログにラインナップされたのだ。8本スポークのバリエーションというか派生デザインの4本スポークで15インチ径の6.5~11.5インチ幅でアルミだけでなく一部サイズではマグネシウム製も選択可能となっている。
また1970年代には「レーシング」(10インチは「ミニ」)と呼ばれていた4本スポークが「ヨンエス」として復活したのだ。東京オートサロンの現場で10インチの「ヨンエス」を見かけた時には1970年代に、FL500レースの取材で鈴鹿サーキットを訪れて、ハヤシ対ファルコンのバトルに興奮していた学生時代にタイムスリップしてしまった。思わず衝動買いしてしまいそうだったが、考えれば我が家には10インチを装着するクルマがない! 取材を終えてから初代「ライフ」がいいか、それとも「ミゼットII」も捨てがたいな、と悩む今日この頃だ。