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日産「セレナ」は「グリーンスチール」を採用していた! 製造コストは高くなっても環境を優先する姿勢に拍手です【Key’s note】

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TEXT: 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)  PHOTO: AMW

  • 日産 セレナ:2022年に6代目として登場したセレナ
  • 日産 セレナ:骨格の一部にグリーンスチールを使用している
  • 日産 セレナ:水平基調なダッシュボード
  • 日産 セレナ:後席には前滑りを低減するシートクッションを採用している
  • 日産 セレナ:骨格の一部にグリーンスチールを使用している

グリーンスチールの使用で製品全体の環境負荷を削減

レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「グリーンスチール」。じつは日産「セレナ」の骨格の一部にはグリーンスチールを使用しているのでした。

製造過程でのCO2排出量を削減した鉄鋼製品

新しく大統領に就任したトランプ氏は、世界の潮流を裏切るように「脱・脱炭素」を掲げています。バイデン政権で進めた脱炭素政策を停止しました。BEVなどの環境車に対する米国内の補助金も廃止すると宣言しています。

ただ、世界的に環境問題への関心が薄れたわけではありません。アメリカ以外の国々は、これまで通りに環境政策を進めています。

例えば日本政府は、環境施策のひとつとしてグリーンスチールを使用した車両に対して補助金を提供すると発表しました。これまでのBEV補助金に加え、+5万円を負担するとしたのです。

グリーンスチールとは、製造過程でのCO2排出量を削減した鉄鋼製品です。従来の製鋼プロセスに比べて環境への負荷が少ないという特徴があります。この鋼材が普及すれば、再生可能エネルギーを使った製造方法やリサイクル材料の使用を通じて環境への影響を抑えることができます。エコフレンドリーな選択肢として注目されています。

この政策は、新技術の普及を促し、持続可能な製造方法を採用するメーカーへの環境に対する動機づけになります。つまり、消費者は環境に優しい車両を選ぶことができるというわけです。これからグリーンスチールを使ったBEVが増えることになりそうですね。

デメリットは製造コストが高くなること

ただし、グリーンスチールにはデメリットがあります。まずは製造コストが高くなることです。1円でもコストを抑えたい自動車にとって、グリーンスチールが簡単に浸透するとは限りません。

あるいは、グリーンスチールを床材などに使用した場合の衝突安全性確保にも高度な技術が求められるというのです。クリアしなければならない課題は少なくありません。ですが実はすでにグリーンスチールを使用しているモデルも存在します。例えば日産の人気ミニバン「セレナ」はすでに、骨格の一部にグリーンスチールを使用しているのです。

製造過程において、グリーンスチールを使用すると約20%のCO2が削減できるといいます。日産は持続可能な開発を重視し、グリーンスチールを用いた部品を採用することで、製品全体の環境負荷を削減しているというわけです。

セレナに搭載されるパワーユニットは内燃機関と電気モーターを結合させたハイブリッド「e-POWER」ですから、あいにくBEVではありません。ですから、補助金の対象ではありません。損得ではなく、環境を優先しているのです。いや、コストアップするのですから利益率は下がります、もしくは価格に転嫁せざるをえない。それでもグリーンスチールを使用している、日産の真摯な姿勢には頭が下がりますね。

政府の補助金政策と日産セレナに代表されるグリーンスチールを使用した車両の普及は、環境問題に対する重要な対策です。この取り組みを通じて、持続可能な社会の構築に向けた一歩を踏み出し、次世代に誇れる地球環境を残していくことが求められています。社会全体が環境にやさしい選択肢を支持することで、より良い未来を築くことができるのです。

これからセレナを見る目が変わりそうですね。

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  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 1960年5月5日生まれ。明治学院大学経済学部卒業。体育会自動車部主将。日本学生チャンピオン。出版社編集部勤務後にレーシングドライバー、シャーナリストに転身。日産、トヨタ、三菱のメーカー契約。全日本、欧州のレースでシリーズチャンピオンを獲得。スーパー耐久史上最多勝利数記録を更新中。伝統的なニュルブルクリンク24時間レースには日本人最多出場、最速タイム、最高位を保持。2018年はブランパンGTアジアシリーズに参戦。シリーズチャンピオン獲得。レクサスブランドアドバイザー。現在はトーヨータイヤのアンバサダーに就任。レース活動と並行して、積極的にマスコミへの出演、執筆活動をこなす。テレビ出演の他、自動車雑誌および一般男性誌に多数執筆。数誌に連載レギュラーページを持つ。日本カーオブザイヤー選考委員。日本モータージャーナリスト協会所属。日本ボートオブザイヤー選考委員。
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