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不人気だったフェラーリが、いまや8000万円オーバー!「F512 M」はルックスで敬遠されがちも、501台という生産台数の少なさが昨今の値上がりの原因か

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2024 Courtesy of RM Sotheby's

テスタロッサ一族でもっともレアなF512 Mは、いまなお相場高騰中!

このほどRMサザビーズ「ARIZONA 2025」オークションに出品されたフェラーリF512 Mは、アメリカに正規輸入された個体。フロリダ州フォートローダーデールの「シェルトン・スポーツ・カーズ」社を介して、新車としてデリバリーされたものである。

ボディカラーは定番の「ロッソ・コルサ」、インテリアは「ベイジェ(ベージュ)」の本革レザーで仕上げられ、パワーウインドウや集中ドアロック、電動サイドミラー、アンチロック4輪ベンチレーテッドディスクブレーキ、5速マニュアルトランスミッション、リミテッドスリップディファレンシャル、エアコン、デジタルクォーツ時計、ステレオシステムなどの装備を満載し、マラネッロ工場からラインオフしたとのことである。

2018年1月に、今回のオークション出品者でもある現オーナーによって入手されたこのF512 Mは、2024年12月にエンジンを降ろしてフルサービスの恩恵を受けたばかり。12万2000ドル以上を費やしたというこの作業には、エンジンの分解・修理、さまざまな機械部品の交換と加工、純正ファクトリー仕様へのリビルドが含まれ、すべての作業の請求書はファイルに残されている。

フェラーリの真髄ともいえるカラースキームで仕上げられ、歴代オーナーによるメンテナンスも充分。そして、オークション公式カタログ作成時点の走行距離は2万2000マイル(約3万5000km)にも満たないという、F512 Mとしても最も好条件の1台と言えるだろう。

圧倒的な希少性こそが、依然として国際マーケットの趨勢をも左右している?

RMサザビーズ北米本社では「フェラーリの伝説的なボクサー12気筒エンジンを搭載した最後のミッドシップ生産車という重要性から、フェラーリファンの垂涎の的となっているこの希少なスーパーカーの、これ以上に魅力的な1台を見つけるのは難しい」というアピール文を添えつつ、42万5000ドル~45万ドル(邦貨換算約6672万円〜7065万円)という、ひところのF512 Mの相場感からは考えられないくらいに自信ありげなエスティメート(推定落札価格)を設定。

しかも2025年1月25日に迎えた競売では、エスティメート上限を大幅に上回る55万5000ドル、日本円にして約8350万円という驚くべき落札価格で、競売人の掌中のハンマーが鳴らされることになったのだ。

ちなみに2024年1月31日、同じRMサザビーズの欧州本社が開催した「PARIS 2024」オークションでは、比較的近い条件と思われるF512 Mが30万8750ユーロ、当時のレートで日本円に換算すると約5030万円で落札されている。今回との価格差には為替の変動はもちろん個体のコンディションやヒストリー、そして会場の盛り上がり具合などさまざまな要素が影響を及ぼしたのだろうが、いずれにしてもF512 Mがテスタロッサ・ファミリーのなかでも格別に高相場という図式は変わりあるまい。

ルックス上の変更点では好き嫌いが二分するF512 Mながら、やはり7177台が生産されたというテスタロッサの相場の約2倍。2280台の512TRに対しても大幅に高い相場価格は、総生産数501台のこの最終モデルが有する圧倒的な希少性こそが、依然として国際マーケットの趨勢をも左右していることを示す、なによりの証左なのだろう。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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