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EVになっても「Gクラス」はSUVキングか? メルセデス・ベンツ「G580 with EQテクノロジー」が都市部のユーザーにこそオススメな理由とは?

メルセデス・ベンツ G580 with EQテクノロジー:ラダーフレームを採用した本格クロカン「Gクラス」で初のBEVモデル。4輪それぞれを個別のモーターで駆動させる新機構の4輪独立式モーターを採用する

電動化しても四角いスタイリングはそのまま

メルセデス・ベンツは「Gクラス」がW463A型からW465型へとマイナーチェンジしたタイミングで、初の電気自動車「G580 with EQテクノロジー」をラインナップに追加しました。オフロードを中心に試乗し、その実力を検証します。

シャシーもエンジン車用のラダーフレームがベース

メルセデス・ベンツ「Gクラス」がW463A型からW465型へとマイナーチェンジした。そのタイミングで新たに設定されたのが、Gクラス初の100%電気自動車「G580 with EQテクノロジー」だ。

これまでメルセデスの電気自動車は、「メルセデスEQ」というサブブランドのもと、「EQS」や「EQE」などモデル名にEQの名を冠してきた。実際にGクラスのEVもコンセプトカーの段階では「EQG」と名付けられていた。しかし、今後は電気自動車がスタンダードになることをふまえEQブランドの戦略の見直しが図られるという。そこでこのタイミングでは、「with EQテクノロジー」としたようだ。

スタイリングは基本的に内燃エンジンモデルと大きな違いはない。シャシーもエンジン車用のラダーフレームをベースとしながら、モーターやバッテリーなどを組み合わせている。新型ではとくに空力性能の改善に取り組んでおり、Aピラーの形状を最適化、そしてルーフ前端にリップスポイラーを追加。さらにB/Cピラーの間やフロアに吸音材を配置することで空力特性、静粛性を向上している。

さらにG580では、ボンネットがドライバーに向かって膨らんだ形状になっており、リアフェンダーにも整流のためのダクトが備わっている。四角いGクラスのスタイリングをキープしながら、少しでも空気抵抗を低減しようと工夫が凝らされている。

駆動用電気モーターを4輪それぞれに各1基ずつ配置

パワートレインは駆動用電気モーターを4輪それぞれに各1基ずつ配置し、独立で電子制御する4WD。モーターは4つとも同じもので、1つあたり最高出力147ps/最大トルク291Nmを発揮する。システム合計では最高出力587ps/最大トルク1164Nmに達する。バッテリーの総電力量は116kWh。一充電あたりの航続距離はWLTPモードで最大473km、WLTCモードであれば530kmとなっている。

じつは既存のGクラスオーナーから要望が多かった装備に、リモコン操作をすることなくドアを開錠/施錠できるキーレスゴーがあった。それがW465型で装備されることになり、鍵をポケットにしまったまま、車両に近づきクラシックなドアハンドルに手をかけて、丸いボタンをプッシュすると重厚なドアがガチャっと金属的な音をたてて開く。今どき珍しい装備でもないが、Gクラスとの組み合わせは新鮮だ。

>>>Gクラスを特集したメルセデスの専門誌「only Mercedes」のvol.222を読みたい人はこちら(外部サイト)

4輪独立制御で悪路をあっけなく走破

スタート/ストップボタンを押すとシステムが起動する。コラム式のシフトセレクターでDレンジを選んでスタートといった一連の動作は内燃エンジン車と変わらない。もし、エンジン音が欲しいという人には、疑似音を放つ「G-ROAR Sound Experience」という機能も用意されている。

モーター駆動ゆえ瞬時にトルクが立ち上がる。とても3トンを超える車体とは思えないほど軽々と動き出す。速度があがるとオートロックが作動し、例のガチャーンというドアロック音が室内に響き渡る。Gクラスを感じる瞬間だ。

W463A型でサスペンションの形式が変更され乗り心地が大きく向上したGクラスだが、W465型では突き上げや揺すられるような動きが軽減されており静粛性も高まっている。ハンドリングも至って自然なもの。4輪のモーターを独立して制御することでディファレンシャルの機能をカバーしているわけだが、違和感のようなものはまったく感じられない。

川のような水たまりに飛び込んでも何の問題もない!

オフロードではその4輪独立制御モーターの性能にさらに驚くことになる。G580は切り替え可能なLOW RANGE オフロードギア減速機能を搭載。さらにトルクベクタリングを用いた仮想ディファレンシャルロックを備えており、各輪のトルクを正確に制御することでディファレンシャルロックと同様の効果を生み出し、険しい地形にあわせて瞬時に必要なトラクションを発揮してくれる。

G 450 dと比べてみたが、ヒルクライムもモーグルもあっけないくらいに簡単に走破してしまう。給排気口の浸水への心配も不要なため最大渡河水深はG 450 dの700mmを上回る850mmを実現しており、実際にサイドステップがつかってしまう川のような水たまりに飛び込んでも何の問題もなかった。

悪路専用の機能としては、4輪独立モーターを個別に制御することでその場でコマのように車体が回転する「Gターン」や、タイトコーナーで後輪軸を中心に小さな回転半径で旋回できる、いわばドリフトのような「Gステアリング」という機能も備わる。これらは行き止まりや切り返しのできない狭い道などオフロードでの緊急回避的なシーンを想定してのもの。公道での使用は認められていないので注意が必要だ。

G580は、Gクラス随一といえるオフロード性能を有してはいるものの、日本においては都市部でファッションアイコンとしてGクラスを使うユーザーにこそふさわしいモデルといえるかもしれない。家庭や職場など日常に充電環境が整っているならおすすめの出来だ。

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