サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

トヨタ「ランドクルーザー」でも「70」と「250」は何が違う? 日常使いで試乗して気がついたことをレポート…同じエンジンでも感じ方はまったく違う!

トヨタ ランドクルーザー250と愛犬のシュン

気になる2台の新旧ランドクルーザーに試乗!

まだまだ続くSUVブーム。トヨタでは「ランドクルーザー70」と「ランドクルーザー250」のデリバリーが進み、路上で見かける機会も増えたこともあって俄然注目が集まっていますが、それぞれどんな生い立ちで、何が違うのか。今回はモータージャーナリストの島崎七生人さんに2台を試乗してもらい、それぞれの特性を語ってもらいました。

アクセル操作に対して期待どおりの反応をみせるランクル70のエンジン

トヨタ「ランドクルーザー70」を「ランドクルーザー250」(後述)と較べると、「なんて趣味性の高いクルマなのだろう」と思った。

オーセンティックといえば間違いなくそうだが、新車ではあるが、41年前からあたかも時間が止まったかのような体験をさせてくれるのが、このランドクルーザー70である。

2014年の復活を経て、今回のクルマは再復活版となる。外観ではヘッドランプまわりが現代的にアレンジされ、盛り上がったエンジンフードなども新しい。が、1920mmと背が高く四角いボディは公園やスーパーの平場の駐車場に停めると明らかに突出して見え、なかなかの存在感。運転席の着座位置はキャブオーバーのトラックや1BOX並みの高さで、サイドウインドウの下端が低く、さらに各ピラーはスリムで立っているから、周囲の見晴らしはじつに良好(盛り上がったフードの見え方が少し違うことを除けば)。これらはもちろん昔のままだ。

インパネをはじめインテリアの基本デザインは2014年のモデルのそれを踏襲。メーター、ステアリング、ATセレクターなどは新しい。ただしメーターの盤面をよく見ると、電圧/水温/燃料/油量の各補助メーターはアナログ計として残されており、このあたりはクルマの基本的な機能を重視するランクルらしい。それとドアに備わるパワーウインドウのスイッチは、1980年代の初代と同世代のX80系「マークII」のそれが使われていて、これには筆者は目頭が熱く(?)なった。

バックモニター内蔵自動防眩インナーミラー(試乗車のリアカメラはカタログ写真とは違う場所に取り付けられていた)は標準装備。プリクラッシュセーフティ、レーンディパーチャーアラートなど、予防安全の各種機能も備わるほか、インパネに充電用のUSB Type-C×2口が備わるのも今風だ。

ラゲッジスペースはスクエアな形状でもあり、実に使いやすい

一方でスローなステアリングは、乗用車ベースの今どきのSUVの感覚からすると新鮮かつ懐かしく、日常使いでの切る/戻すの操作は自分で少し意識しながら行なう必要がある。少なくとも14年ぶり(最初のクルマから数えれば40数年ぶり)の試乗で、当初は筆者も、路地でクルマが曲がり切らず、あらららと切り返してやり直した。ただしボディサイズそのものは不当に大きいわけではなく、スーパーの駐車場の出し入れなどは苦もなく行える。

シート座面は前後とも高く、乗り込みにはステップを使うことになる。後席の座面高はほぼ1mとここ最近のSUVに対して明らかに高く、体重15kgの我が家のシュン(乗り心地・NVH評価担当、柴犬・オス・3歳)を抱きかかえてシートの上に乗せるのはひと苦労だった。ラゲッジスペースはスクエアな形状でもあり、じつに使いやすい。

それと、走らせている実感がヒシヒシと伴うところも現代のクルマとの大きな違いだ。エンジン音や振動はつねに車内で感じるし、ステアリングも走行中はゆったりとした操作が肝要だ。現代のSUVならBEVも含め試乗経験を積むシュンも、ランクル70のこの音と振動は初体験で、走行中、いつものように居眠りをしている場合じゃなかったらしく、終始オスワリの姿勢で様子をうかがっていた。

搭載エンジンは2.7Lの4気筒ディーゼルターボの1GD-FTV型(204ps/500Nm)。今回はオンロードのみの試乗だが、6速ATとの組み合わせで、低速から高速まで、アクセル操作に対して期待どおりの反応をみせてくれ、決して古風ということはなく、運転しやすいパワーユニットだと再認識した次第だ。

ランドクルーザー250は、遠くに出かけてみたい1台

同じ新車ながら、ランクル70のあとに試乗すると、否応なしに41年分の時の流れを実感させてくれるのがランクル250。伝統のラダーフレームは今どきのセンスで仕立てられ、まさしく「ナウな」SUVに仕立てられている。

まず外観スタイルがいい。デザインのフェーズはもちろん新しいが、機能を決して犠牲にせず、華美にも過ぎず、眺めていて心地いいカタチに仕上げられていると思う。一見すると平面に思えるボディは、前後方向で見ると大きく絞りを効かせ、引き締まって見せているのがポイントだ(前後のウインドウも「曲面」だ)。

ちなみに筆者がもし自分で乗るとしたら、オプションで用意される「ヘッドランプ(丸目)」を選びそうだが、力強くもシンプルでしなやかなルックスは、街中でもオフロードでも風景に馴染むスタイルといっていい。

インテリアは、これはもう最新のSUVそのものの質感、デザインでまとめられ、じつに居心地がいい。シフトまわりの最小限の面積の加飾パネルとフラットなスイッチが組み合わせられスマートだし、中央部の物理スイッチもスッキリ整然と並ぶ。しいて言えばステアリングスイッチのうちのオーディオ関連でボリュームと選曲のスイッチがスポークの左右に分かれているのは、BGM必要不可欠派の筆者には、どちらか片側にまとめられている方が認識しやすいと感じた。

とはいえ抑えを効かせてデザインされたシート表皮、水平を通したインパネなど、クールな上質感が味わえるのがいい。JBLスピーカーが鳴らす、柔らかく描写が丁寧な音(じつは筆者は自宅のオーディオでもJBLを長年愛用している)も、ずっとランクル250を走らせていたいと思わせる。

70に比べ現代的で、ほぼ乗用車感覚の操作性

2列目の居住性は、シートサイズが十分あり、ウインドウ下端も低く視界は明るい。さらにサードシートは電動で操作ができ、格納状態からならシートバックが起き上がりつつ、床下から座面が迫り出してくる(あらかじめトノカバーのカートリッジは外しておき、サードシートの背もたれは干渉しない角度にしておくことで電動の操作が可能)。ラゲッジスペースは実測してみると奥行き1060mm×幅1150mm〜1380mm×高さ900mmほどで十分な余裕(サードシート格納時)。さらにリアゲートはガラスハッチ単独での開閉も可能だ。

それとランクル70から乗り換えて、我が家のシュンも飼い主と同様に一番喜んでいたのが、最新のSUVらしい快適なドライバビリティだった。サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リアがトレーリングリンクのコンベンショナルなものだが、ラダーフレームに支えられ、オンロードでクラス相応の実にフラットで心地いい乗り味が味わえる。

ステアリングもランクル70に対しては現代的で、ほぼ乗用車感覚の操作性だ。試乗車はZXグレードでエンジンは70と共通の2.7Lの4気筒ディーゼルターボだったが、音と振動の室内での感じ方は70とは同じエンジンか!? と思えるほどの差。これには8速AT(70は6速AT)の恩恵もあり、低速から高速走行まで、70以上にストレスのない、自在でスムースなパワーコントロールを可能にしている。

250はランクルとしては今どきのクルマだが、たとえばサイドミラーの天地方向の視野が十分で、リモコンで角度調節しなくとも上から下まで見渡せたりと、これはオフロード由来のランクルらしい発想だ。今回は日常使いの試乗だったが、もしもまた借りる機会があれば、今度は締め切りをすべてキッパリとクリアしたキレイなカラダで(?)どこか遠くに出かけてみたい。

モバイルバージョンを終了