地球環境に配慮したクルマを購入したいと友人から相談が
ドイツ・ミュンヘン在住の池ノ内みどりさんは、ドイツ人の友人から地球環境に配慮したクルマの買い替えの相談を受けました。彼らの夢のクルマはテスラ。走行距離が少ないテスラ「モデル3」の認定中古車は約475万以下で販売されていますが、現実的に考えるとどうやら問題があるようです。
クルマのCO2排出量に敏感なわりには…
ミュンヘンではフェーン現象で10℃を超えて春の陽気に近い日があり、私の日常のアシであるママチャリを一生懸命漕いでいると汗ばむときもあります。この原稿を書いている日は久々に雪が降ってひんやりとしていますが、うっすら積もる程度です。
先日、学生時代からの友人であるドイツ人家族から電話でクルマの買い替えの相談を受けました。新車ではなく中古車を希望し、予算は2万5000ユーロだそうです。現在の為替レートで考えると、中古車で約400万円の予算はそこそこ良いクルマが買えるのでは? と思えそうですが、実質的には物価などを考慮すると250万円くらいの感覚です。
さて、この家族はいわゆる「丁寧な暮らし」をしていて、口にする物はすべて有機栽培のもので超高学歴の意識高い系家族。とくに大気汚染の問題から、自動車から排出されるCO2には非常に批判的で敏感です。従って、私が内燃機関を所有していることについていつもちょっと皮肉を込めて「環境保護に配慮していないのは悪い」と揶揄されています。
ただ、彼らの家族が現在所有しているのは1990年代に製造されたルノーのミニバン「エスパスII」です。「そのCO2排出量はとても地球環境保護に適応していないのでは?」と言ってみたことがあるのですが「毎日乗っているわけではないので十分に地球環境保護に配慮している」というなんともよく分からない返答がありました。それをいうならば、私も毎日のアシはママチャリです。
自動車の製造法に関してEUは非常に厳しい基準を設けており、CO2排出量に対しても厳しい制限があります。現在のクルマは厳格な法律の下に製造されており、非常に環境に配慮されていると言っても聞く耳を持ってくれないので困ったものです(苦笑)。スペック表を見ると、各モデルのCO2排出量が記載されているのですが……。
テスラ モデル3の認定中古車は約475万円以下で販売
さて、こんなお騒がせ家族はイーロン・マスクを信仰していることもあり、一家の夢のクルマはテスラです。将来的な計画では、自宅にはテスラのソーラーパネルを設置したいそうです。ドイツメーカーをはじめ、世界中の自動車メーカーも素晴らしいEVを製造していますが、「テスラ以外は地球環境に配慮していない」ということで認めてくれないのでこれまた厄介です。われら地元のBMWもまったくもってダメだというのです。
ドイツ・テスラのウェブサイトを見てみると、走行距離が少なめの「モデル3」の認定中古車が3万ユーロ(約475万円)以下で数多く販売されていたのでリンクを送り、電気自動車はいつか電池交換が必要になり、その金額は非常に高額であることも付け足しておきました。彼らが現在所有している古いエスパスIIと同等のトランクルームの容量が欲しいらしいのですが、テスラはエンジンを積んでいないことでフロントにもトランクがあるので良いのではないでしょうか。
中古車でそこそこお手頃の車種とは
ヨーロッパでは日本のようにミニバンはあまり販売されていませんので、選択肢はさほど多くはありません。彼らが所有しているエスパスの最新モデルはハイブリッドで高額なので、日本でも人気の「カングー」や「ベルランゴ」、トヨタ「プロエースシティ・ヴァーソ」、日産「タウンスター」、VW「キャディ」などもおすすめしておきました。これらのモデルにはEVやPHEV(プラグインハイブリッド車)モデルも販売されているうえ、中古車はそこそこお手頃です。天井も高く、荷物も数多く積めるので打ってつけではないかと思います。
ただ、たとえばカングーのEVモデルの難点は非常に持続距離が少ないことでしょうか(ADAC=ドイツ自動車協会の実測で約230km)。テスラ信者にはおそらく響かないラインアップかもしれませんね。「将来的にEVを所有した際には、充電休憩のために数日長く旅程が必要になることもまったく問題ない」と言っていましたので、彼らがよく行くイタリアのフィレンツェへの片道約700kmのバカンスには何度か充電をしながらのんびり行けば問題なのではないかと思います。私にはとてもそんな経済的、時間的な余裕はありませんが……。
どのクルマを購入するか乞うご期待
この家族の一人息子さんは、現在イギリスのオックスフォード大学に留学中。しかし、ロンドンから実家へ年に数回帰省する際には地球環境を配慮して、鉄道を乗り継いで帰ってくるという徹底ぶりです。その超・長時間の移動には、読書や勉強をして十分活用できるので苦ではないそうです。時間を十分に使える学生さんならではですよね。この息子さんはハーバード大学への留学も希望されているのですが、アメリカへはどうやって行くのかも気になるところです。飛行機はすでに乗ることをやめていますし、船のCO2の排出量を考えるとなかなか難しいですよね。
CO2排出量や地球環境保護という表面的なことだけに集中しすぎて、そもそも電気自動車への見解が違うと意思疎通が難しいなと感じます。私の周りには電気自動車の開発をしている友人がいますので、彼らのアドバイスを受けて説明をしてみたのですが、内燃系=悪という構図が出来上がっていて聞く耳持たず。家族をはじめ親族全員が超高学歴のエリート家族なのに不思議です。
そんなこんなで古いガソリン車を所有しながらも、あれほど私のクルマを悪だと批判し続けていた彼らですが、ここ最近になって内燃機関も視野にいれると言いだして、もうよく分からなくなってきました(苦笑)。次の車検は通らないらしいので、彼らが何を買うのか乞うご期待!