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「ミウラP400」が3億円オーバー!?「SV」を上回る評価を得ながらもオークションでは流札…世界最高のレストアが施されたヒストリーとは

「ミウラP400」が3億円オーバー!?「SV」を上回る評価を得ながらもオークションでは流札…世界最高のレストアが施されたヒストリーとは

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Bonhams

世界最高レベルのレストア、オリジナル性も充分ながら……

シャシーナンバー「3057」は、充分という以上のコンディションを誇っていたにもかかわらず、さらなるオリジナルに戻すことを決意した新オーナーは、アメリカ国内でもっとも有名なミウラのスペシャリストたちを集め、費用を惜しまないレストアを行うことにした。

「ミスター・ミウラ」と呼ばれるジェフ・ステファンのほか、プロジェクトを監督するのは、かつてのレジェンド、ゲイリー・ボビレフのもとで修行を積んだ「デビー・モーターズ」のデビー・シデラ。さらに「パーマー・コーチワークス」のアンディ・パーマー、「ホット・ロッド・アンド・ホビー」、「エド・ピンク・レーシング・エンジンズ」というドリームチームにくわえて、パーツ調達にはイタリアの「BBスタイル」も参入した。

アンディ・パーマーは、シャシーとボディに構造的な改良を加え、パネルフィットを改善。徹底的にストレートなボディラインを実現した。

いっぽうシャシーのコンポーネンツは、ジェフ・ステファンが「ランボルギーニ・ポロストリコ」から直接調達した部品を使って、オリジナルのナンバー入り「アームストロング」社製ショックアブソーバーと5速トランスアクスルを含めてリビルトされた。

さらにBBスタイル社は、ブラックのシートとドアカード、ブラウンのコンソールとダッシュボード、カーペットをオリジナルのイタリアのサプライヤーから調達し、新車として出荷された際の仕様でレストア。ミウラ誕生50周年記念に特別に製作されたピレリ社製専用タイヤに至るまで、細部に至るまで抜かりはないとのことである。

潤滑システムはオリジナルのP400仕様に戻された

オリジナルのエンジン(No.1190)はフルリビルトされ、内部もアップデートされている。鍛造のショートスカートピストンが嵩張る純正の鋳造ピストンから換装されたほか、P400SV用のドライサンプ機構は取り外され、潤滑システムはオリジナルのP400仕様に戻された。

そして、これら内部のアップデートにより、エンジンはオリジナルの350bhpを大幅に上回るパワーを発揮したうえに、現オーナーは豊富なレース経験を活かして、P400SVの基準をはるかに超える構造的な改良を施したレストアの利点を最大限に活かし、見事なハンドリングを実現したという。

2016年のレストア直後、オーナーはミウラの50周年記念イベントが併催された「ザ・クエイル・モータースポーツギャザリング」に合わせて、ショーサーキットに乗り込んだ。これまでで最大のミウラが集まる中、シャシーナンバー「3057」は「ベスト・レストアード・ミウラ賞」に輝いた。同年の「コンコルソ・イタリアーノ」では、「ベスト・ミウラ賞」、「ベスト・ランボルギーニ」、そして最高賞の「ベスト・イン・ショー」の三冠を受賞する。

これらの輝かしいコンクール受賞歴に基づき、「アウトモビリ・ランボルギーニ・アメリカ」はシャシーナンバー「3057」に、クラシック・ランボルギーニにとって最高の栄誉である「ブル・アワード」を授与。さらに2023年8月、「3057」はモントレー・カーウィークのコンコルソ・イタリアーノにて、再びベスト・ミウラ賞とベスト・イン・ショーを獲得した。

ちなみに、これは「ミスター・ミウラ」ジェフ・ステファンにとっての最後のフルレストアプロジェクトであり、彼はこれが自身の最高傑作であると公言しているのだ。

ボナムズ社はこの来歴と最上ランクのレストア、そしてオリジナル性の高さを鑑み、220万ドル~280万ドル(邦貨換算約3億2900万円〜約4億1900万円)という自信たっぷりのエスティメート(推定落札価格)を設定。これは同じミウラでもP400SVのマーケット相場価格をも上回るもので、P400としては記録的な価格設定だったといえよう。

ところが、迎えた競売では出品者側が期待していたほどにはビッドが伸びず、最低落札価格には届かないまま流札。現在ではボナムズ営業部門によって、元のエスティメートのまま継続販売となっているようだ。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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