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16歳で衝撃を受け24歳で購入! 50年以上トヨタ「スポーツ800」を所有するオーナーが、定年後にもう1台増車した理由とは?

1966年式のトヨタ スポーツ800とオーナーの荒木秀行さん

日本のモータースポーツ黎明期に夭逝した若手ドライバー、浮谷東次郎

日本国内のモータースポーツ史に興味を持った人であれば、その名を知らないはずがない伝説のドライバーが浮谷東次郎です。1965年8月21日に練習中の事故でこの世を去るまで、たった2年弱でしたが当時のモータースポーツファンを熱狂させたレーシングドライバーでした。当時、浮谷東次郎の名前が世に広まる白熱の逆転劇を現地で見ていたという荒木秀行さん。トヨタ「スポーツ800」を購入した理由は、船橋サーキットでの興奮が関係していました。

プレゼントされた入場券で見た、浮谷東次郎とヨタハチの活躍

「私が高校1年生になる1965年にヨタハチが発売され、船橋サーキットがオープンしました。その近所に住んでいたので、たまたま入場券をいただくことができ、生まれて初めてサーキットへと足を運んだのです」

そう話し始めてくれたシルバーのトヨタ「スポーツ800」のオーナーである荒木秀行さん。筆者が取材のオファーで声をかけた理由は、荒木さんの愛車が習志野ナンバーだったからだ。取材場所は、熊本県阿蘇市にある阿蘇神社前の参道前。「トヨタスポーツ800還暦祭」の九州地区開催のために、千葉県から参加? 千葉~熊本という距離をこのヨタハチで来た? という興味が沸いたからだった。しかし、その長距離移動の内容よりも、もっと衝撃的な実話を聞かされることになったのである。

「私は、浮谷東次郎さんが走るレースを生で観戦しているのです。あのときは、浮谷さんの名前さえも知らなかったのですが、レース中の接触からのピットイン。マシン修復後、もの凄い追い上げで逆転優勝。私の初めてのレース観戦が、浮谷さんがヨタハチで激走し、勝利を挙げたあのレースなのです。浮谷さんがゴールする際には、観客が総立ちだったことは今でも覚えています」

モータースポーツファンであれば一度は耳にしたことがあるだろう、伝説のレースの目撃者。それが荒木さんだった。浮谷東次郎とヨタハチの活躍で受けた感動と興奮。今でもスポーツ800を愛する理由は、それに尽きる。

24歳でヨタハチ購入後、2台を所有し続ける

荒木さんがスポーツ800を初めて手に入れたのは、24歳のとき。あの興奮からすでに8年が経過していたが、16歳のときの感動を忘れることなく、夢を実現したことになる。

「ところが仕事が忙しくて、せっかく手に入れたのになかなか乗る機会がなかったのです。でも手放さずに所有し続けていました。古くなってしまったので修理に預けたのですが、私が定年になってもまったく完成せず。さすがにいつまでも乗れないのは嫌だったので、その修理を出しているお店でたまたま売りに出されたこのヨタハチを購入したのです」

千葉から熊本までの道程は、東京・有明港から新門司までのフェリーがメイン。35時間に及ぶフェリー旅をともにしたこの愛車は、荒木さんにとっての2台目のヨタハチだという。そして、冒頭で説明された初めて手に入れたヨタハチは、まだ修理から上がってこないが、購入から50年が経過した個体ということになる。

2台目にも、とあるレーサーのサインあり

「ヨタハチは、パワーはないけど車体が軽いので、それなりに走りを楽しめます。デザインが可愛いのも好きです」

そう語ってくれた荒木さんの愛車は、ミラーは同年代のトヨタ「カローラ」用に、ホイールもアルミに変更されているが、基本的に純正状態が多く残された個体とのこと。5年前のスポーツ800の55周年記念の際は、北海道地区にも参加。そして今回の九州地区参加と、フェリーを活用しながら長距離ドライブも満喫しているのだ。

「このクルマ、ボンネット裏にサインが書いてあったんですよ。前のオーナーさんがもらったサインだと思うのですが、誰だと思います?」

そう言って見せてくれたそのサインは、なんと細谷四方洋さん。浮谷と同時期にトヨタのワークスドライバーに抜擢され、トヨタ「2000GT」の開発に初期から携わり、同車での速度記録挑戦や各大会での優勝。さらには、1968年のトヨタ初のプロトタイプレーシングカー、「トヨタ7」を駆り優勝を収めるなど、1970年代前半まで活躍した。その後はトヨタで後進育成などに携わるなどし、2024年1月30日に85歳でその生涯を閉じたレジェンドドライバーだ。

荒木さんには、実体験したレースの興奮とヨタハチの魅力を2人のレジェンドドライバーの逸話とともに、多くの人に語り継いでいってもらいたい。

>>>2023年にAMWで紹介されたクルマを1冊にまとめた「AMW car life snap 2023-2024」はこちら(外部サイト)

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