今のSUVの世界観を30年前に先取りしていた
1980年代後半から1990年代にかけて、バブル終焉期のムーブメントとなったRVブーム。もともとRV車を生産していた自動車メーカーは大喜びでしたが、RV車をラインアップしていなかったメーカーは開発を急ぐことになります。今回は、そんなメーカーのひとつであったホンダが、1995年10月に発売した初代「CR-V」をカタログで振り返ってみます。
ホンダがオリジナルで送り出したSUVモデル
「クリエイティブ・ムーバー(生活創造車)」。今、あらためて冷静に言葉にしてみると、何とも甘酸っぱいというか、フワッとしたフレーズではある。が、振り返ると1990年代中期に、ホンダがそれまでのハッチバックやセダンやクーペやスポーツカーとはひと味違うニュータイプのクルマを矢継ぎ早に創出、ユーザーから注目を集めた。当時存在した各社のRV誌の取材対象、素材としても大いにもてはやされたのもそう遠い昔の話ではないが、いずれにしても、それまでのRVブームを受け、さらに新たなムーブメントを作ったのが一連のクリエイティブ・ムーバーだった。
くくりとなったのは「オデッセイ」(1994年10月)、「CR-V」(1995年10月)、「ステップワゴン」(1996年5月)、「S-MX」(1996年11月)の4モデル。このうちで今につながるSUVタイプのモデルがCR-Vだった。
それまでのホンダは、RVブームの中で自社開発のSUVを持たず、ジープ「チェロキー」と「ラングラー」を自社の販売網で扱っていたほか、「ホライゾン」(いすゞ「ビッグホーン」)、「クロスロード」(ランドローバー「ディスカバリー」)、「ジャズ」(いすゞ「ミュー」)などOEM車を用意していた。今思えば「そうだったんだぁ」と新鮮に受け止める人もいるかもしれない。
で、ホンダオリジナルのSUVを! ということで登場したのがCR-Vだった。車名は「Confortable Runabout Vehicle」の意味をもち、日常から自然の中まで、快適で思いのままに使いこなせるクルマとの思いが込められた。大きな特徴だったのは、それまでのオフロード4WDのようなフレームを持たず、一般的な乗用車と同じモノコック構造のボディ骨格を採用した点。さらにフラットなフロア構造とした点も、CR-Vがそれまでの同種(この頃はSUVではなく、CR-V自身も当時のカタログでは「ライトクロカン」と謳っていた)のクルマとは大きく異なる特徴だった。