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EV嫌いの旧車党がボルボ「EX30」に雪上試乗してみたら…お値段以上の上質感! ナチュラルで気持ちの良い新時代の高級車でした

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 神村 聖(KAMIMURA Satoshi)

雪上で明らかになったシャシーバランスと素性の良さ

この日がEX30初乗りということで、コクピットドリルを担当してくださるという試乗会スタッフの招きに応じて、まずはシートに腰を降ろして操作系を見渡してみたところ、いわゆる「START」ボタンがどこにもない。聞けば、キーを持って乗り込めば自動でオンとなるとのこと。つまりドアロックとシステムの起動は、スマートキーを持ってクルマに近づけばロック解除となり自動的に起動。離れれば再びロックとなる。

そして、おそろしくシンプルなダッシュパネルの中央に鎮座する、ドライバーディスプレイとセンターディスプレイを12.3インチのタブレットに集約した「コンバインド・センターディスプレイ」の使用法もご教示いただいたのち、一部除雪された駐車場からすでに真っ白な一般道へとゆっくり走り出す。

スロットルを開けばすぐに最大に近いトルクを発生してしまうという電動モーターの特質は、経験不足な雪道でのトラクションに不安を感じていた筆者を大いに縮こませてはいたものの、それでも意を決しておそるおそるスロットルを踏んでみると、後輪をホイールスピンさせることもなく、とてもスムーズで安定感のある加速を見せる。また、回生ブレーキによる1ペダルドライブでほとんどの制動・停車を済ませられることもあって、市街地では積雪をあまり意識することなく走ることができる。

さらに高速道路で本線入りを前に加速する際にも、とてもスムーズで柔らかい加速感。272psというスペックを信じないわけではないのだが、トルクの立ち上がりが直線的ではなく二次曲線的にうまく制御されているせいか、筆者にとっては「ちょうど良いパワー」と感じられるのだ。

価格以上の上質感があふれる、新時代の高級車かも……?

ところで、このようなコースコンディションゆえハンドリングを積極的に試す機会には恵まれなかったものの、平日のスキー場の、誰もいない広大な駐車場を見つけてジムカーナ的な走りにもチャレンジしてみたところでは、スロットルで車体の動きをある程度のレベルまでは保持できるシャシーバランスの良さや、妙なキックバックのない上質なステアリングフィールが確認できた。

いっぽうの乗り心地については、路面の凹凸をコツコツ拾ってしまう傾向もあるものの、これまでに乗ってきた、より大柄なボルボたちを凌ぐようにも思われる剛性感もあって、不快感は皆無である。

また、エンジンの発生する機械音や排気音のないEVではことさら気になってしまうロードノイズについても、車両クラスのわりには低く抑えられていることも相まって、小さいながらも現代の社会的課題と向き合い、それを独自のスタイルとして表現した上質なクルマ。これまでの常識からは逸脱してようとも、新時代の高級車であるとさえ感じられてくる。

もちろん、まったく新しい価値観による独特のインテリアの設えは、乗る者の嗜好によって好みが分かれるのは間違いないだろう。それでも、ここまでサステナブル志向に振り切ってしまうと、本革レザーと天然ウッドパネルに代表される旧来の価値観による旧き良き高級車を愛してやまないはずの筆者にとっても、不思議と悪くないものに感じられたのだ。

ただ、ゆるい坂道とたかをくくって、撮影のために停止するたび再発進に苦労させられてしまった苦い経験からすると、雪上を走る機会の多いユーザーは、やはりツインモーターのAWD版の追加設定を気長に待つほうが得策かもしれない。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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