街乗りの評価はもちろん跳ね馬史上最高
日本市場でも順調にデリバリーされているようだ。東京の中心部であれば見かけることも多くなった。イタリアで試乗したきりだったので、改めていつもの京都ドライブに連れ出してみることに。検証すべきポイントは、日本の道でもマラネッロ産スポーツカーらしさを感じることができるのかどうか、さらにはこの大きなサイズを京都の街中で持て余しはしないだろうか、といったところだろうか。
もし皆さんがこれからレポートするような予備知識もなしにプロサングエを初めて走らせたとして、まず驚くのはライドコンフォートだろう。件のアクティブサスが生み出す乗り味は、まず乗り心地の良さとして体験できる。「ローマ」やルッソよりも確実にコンフォータブルで、しかもフラットライドだから扱いやすい。
速度を上げていくとボディが徐々に引き締まってゆき、ボディサイズをすぐに忘れさせてくれる。フロントアクスルと上半身との、そしてリアアクスルと腰まわりとの、それぞれの連結がドライバーの中で一体となる。それゆえ狭い路地でも躊躇うことなく入っていけるのだ。京都の街中では狭い通りでも市バスが走っているから、乗用車のボディサイズなんてさほど気にしなくていい場合が実は多い。要するに精神的な問題だ。一体感はそれを解消する最高の処方箋だろう。
乗用車としての街乗り評価はもちろん跳ね馬史上最高だ。けれどもそれだけではもちろん“フェラーリ”とはいえない。高速道路でのグランドツアラー性能、そしてカントリーロードでのハンドリング性能に期待した以上の妙味を感じることができなければ、マラネッロがあえてSUVスタイルのモデルを作る意味もないだろう。
プロサングエの走りは「812 GT 4ルッソ」だった!?
はたして、高速道路では極上のグラントゥーリズモとして振る舞った。とにかく快適で、視界が高いうえフラットライドだから身体のブレもない。つまり目が、頭が疲れない。加減速は意のままで、なんならADASも優秀とくれば、京都までの450kmでもロングドライブというには物足りなく思えるほどだった。
カントリーロードに出向いた日はあいにくの雨だった。スポーツカーを走らせると、嬉しいような悲しいような微妙な気分になる。ウエットなら低い速度域でもその本性を確認できるからテストドライブには好都合だが、ドライビングを堪能するという点ではドライにこしたことがない。
はたしてプロサングエの走りは、たとえていうなら「812 GT 4ルッソ」だった。4シーターモデルのルッソを超えたばかりか、ほとんど「812スーパーファスト」のようなドライビングファンを引き出すことができたからだ。しかもウエットコンディションで!
V12は8000回転以上までストレスなく回れて、かつ力強さもキープされる。DCTによるシフトアップシフトは素早くシームレス。そしてハンドリングはドライバーの意思に忠実かつ正確で、何よりコーナリング中に腰を外側に落として走るかのような姿勢が、よくできたFRスポーツカーそのものだった。加えて高回転域におけるエンジンフィールとサウンドの官能的なことといったら!
プロサングエはまさしくドアが多く背が高い駿馬だった。