今やラジアルタイヤは当たり前の存在なだけに……
ブランド構築にはたゆまぬ努力が求められます。商標登録も取得しなければなりません。実はこれ、僕も申請した経験が少なくないのですが、許可が下りるまでには年単位の時間がかかります。申請は無料ではありません。商標登録の手続きは専門知識を要するため、通常は弁理士に依頼します。弁理士の報酬も決して安くはありません(住友ゴム工業ほどの大企業なら、社内に専門の部署があるでしょうが)。
さらに、ブランドを浸透させるには長い時間が必要で、短期間で確立できるものではありません。それでも「SP SPORT MAXX」から「SP」を外すのですから、よほどの理由があるに違いありません。そのあたりを探ってみたのですが……。とはえ、答えは実にシンプルなものでした。
「ロゴが長いから……」
だそうです(笑)。
たしかに、「SPORT MAXX LUX」が「SP SPORT MAXX LUX」では少し長すぎますね。「SPORT MAXX RS」も「SP SPORT MAXX RS」になると、ロゴのバランスが悪くなります。
ロゴはタイヤのサイドウォールに刻まれます。DUNLOPのロゴと「SPORT MAXX LUX」や「SPORT MAXX RS」の商品名が対角線上に配置されるのですが、一方のロゴが長すぎると、全体のバランスが崩れるのです。
さらに、長いロゴを薄いサイドウォールに刻むには、書体を細くする必要があります。すると、文字が細すぎて目立たなくなる。スポーツ性能を謳っているのに、イメージがか弱いのも困る……。
「な〜んだ、そんな理由か(笑)」
そう拍子抜けした読者もいるかもしれませんが、ロゴは決して軽視できない要素です。印象に大きく影響を与えます。それを見直したということは、ダンロップが「SPORT MAXX」に並々ならぬ想いを込めている証拠でしょう。
次に「SP」が外されるのは……?
とはいえ、「SP SPORT MAXX 060+」には「SP」が残ったまま。しかも、かなり長い。この整合性はどう説明するのか……という疑問もありますが、おそらく次回のモデルチェンジのタイミングで、「SP」が外されるのではないかと僕は予想しています。
ちなみに、SPの語源は「SPORT」ではありませんよ。そうだとすると、「SPORT SPORT MAXX」になってしまいますからね。
SPとは「SPECIAL PRODUCT」の略です。遠い昔、タイヤの構造がバイアスからラジアルへと移行する際、特別なタイヤであることをアピールするために「SP」が付けられました。しかし、今やラジアルタイヤは当たり前の存在。「SP」はその使命を終えた……とも考えられるわけです。なるほど……ですね。
となると次の楽しみは、「SP SPORT MAXX 060+」からいつSPの文字が消えるかですね。