インダストリエ・ピニンファリーナに納入された1台
V12を搭載したフェラーリで、手に入れやすい筆頭に挙げられる「400」の系譜ですが、2025年2月4日〜5日にRMサザビーズがフランス・パリで開催したオークションに出品した「412」は比較的高値で落札されました。その理由は最初のデリバリー先が何を隠そう「ピニンファリーナ」だったから……? フルサイズのスペアタイヤ、ツールキット、登録書類、オーナーズマニュアル、サービスブックレットが付属した、コレクションにふさわしい1台を紹介します。
優美なスタイリングでファンを魅了した4シーターGTモデル
スポーティな2シーターのストラダーレ(ロードカー)、あるいはコンペティツィオーネ(レースカー)が注目される傾向にあるフェラーリ歴代のモデルだが、もうひとつ忘れてはならないのは、優美なスタイリングでカスタマーやファンの目を魅了した4シーターのGTだ。
ちなみにフェラーリにとって初の4シーターGTとなったのは「166インテル」で、そもそもコンペティツィオーネとして生を受けた166インテルをベースに、多くのカロッツェリアが独自のボディを組み合わせ、その美しさを競った。
1950年代には一時4シーターモデルは姿を消してしまうが、1960年には「250GTE2+2」で復活。それがフェラーリにとって最も重要な輸出市場であるアメリカで、高い人気を得ることになった。もちろんカスタマーがフェラーリとしてのパフォーマンスを4シーターモデルにも要求したことは当然だ。それに応えるかのように、フェラーリからは続々と高性能な4シーターが誕生した。
その一連の流れの中で大きな転機となったのは、やはり1972年に誕生した「365GT/4 2+2」だろう。ピニンファリーナによる直線基調の近代的なボディスタイルに、320psを発揮したデイトナ用のそれをベースとした、4.4LのV型12気筒エンジンを組み合わせたこの2+2モデルは1976年までに521台が生産され、その後同年には排気量を4.8Lに拡大し3速AT仕様も設定した「400/400オートマチック」に進化。
1979年には当時年々厳しさを増していった排出ガス規制に適合させるため、ボッシュ製のKジェトロニックを採用した「400i」へとモデルチェンジされることになった。フェラーリの目は、つねにアメリカ市場を向いていたと言っても、それは間違いではないのだ。