タケオカ「ドンキー」のEV版として生まれた「ルーキー」
手に入れたクルマを自分好みにカスタムするという趣味は世界共通。昨今ではわが国でも多様な方向性のカスタムが見られますが、なかでも最も制約が少なく、オーナーが自由に手を加えることができるジャンルといえば「原付カー」でしょう。今回ご紹介するのは、オーナーの手によって諸々のカスタムが施された小型EV、竹岡自動車工芸(以下、タケオカ)の「ルーキー」です。
正確には「原付カー」ではなく「屋根付き4輪原付スクーター」
あらためてタケオカというメーカーについて触れておくと、同社は移動機器車両の設計・製造販売を生業とする富山県のメーカー。1981年に光岡自動車と協力して原付カー市場に参入して以来、多くのモデルをリリースしてきたこの分野の老舗である。
1985年には道路交通法が改定され、50ccエンジンを搭載した1人乗り小型3輪/4輪自動車=原付カーを運転するには、原付免許ではなく普通免許が必要となった。このことをきっかけに原付カーの市場は一気にシュリンクしてしまい、多くの同業他社はこの分野から撤退していったのだが、タケオカだけは原付カー市場に踏みとどまり続け今なお盛業である。
タケオカは運転には普通免許が必要となった「原付カー」の開発・生産を継続する一方で、原付免許しか持たないユーザーを切り捨てることはせず「原付免許で乗れる四輪車」の開発を決定する。
交通弱者に寄り添う同社の心意気に感心するが、そこで生まれたのが1992年にリリースされた屋根付き4輪原付スクーター「ドンキー」と、さらにそのドンキーをベースに北陸電力との共同開発で開発し1997年にリリースされたEV「ルーキー」である。タケオカのドンキーとルーキーは、じつは「原付カー」ではなく、正確には原付免許で乗れるミニマム・トランスポーターとして開発された「屋根付き4輪原付スクーター」なのである。
あえて原付カー登録をしてカスタマイズ
取材したルーキーのオーナーは、AMWの「マイクロカー図鑑」連載でも度々取材でお世話になり、この他にも数多くの原付カーを所有するマニアとして有名な水口 雪さんだ。
オリジナルのルーキーは屋根付きスクーターということで、密閉されたキャビンも持たない必要最低限の乗り物。ボディサイズは全長1790mm×全幅720mm×全高17490mmとなっている。
ちなみに運転席両側に風避けのドア/ウインドウなどを取り付けると原付スクーターではなく原付カー登録となり、運転には普通免許が必要となるとのこと。二段階右折やヘルメット着用の有無、最高速度などの観点から、オーナーはあえて水色ナンバーの原付カー登録をしているが、カスタムの方向性としてはルーキーの本来の姿であるミニマムな「原付スクーター」のコンセプトを活かす方向で手が加えられている。