ハリケーンの直撃で予定を大幅に変更することに
2024年の8月末から、アメリカをミシシッピ川沿いに南北縦断して音楽の歴史をたどる旅に出ることにした筆者。ニューオリンズでダッジ「デュランゴ」をレンタルしてBBキングにちなみ“ルシール号”と命名し、仲間と3人で移動。ブルースの故郷である「ミシシッピ・デルタ」を巡ります。もうひとりのメンバーを迎えに再度ニューオリンズへ向かったのですが……。
台風上陸の前にらニューオリンズへ移動
ミシシッピ州ヴィクスバーグのAirbnbにチェックイン。ビクトリア建築の素敵な家のはずだったが、ハリケーン直撃と聞いては、それを鑑賞する余裕もない。さっそく原田さんがフロリダに住む友人からハリケーンの情報を送ってもらう。
「ハリケーン、フランシーヌ。カテゴリー2で、かなり大きいらしいです。明日、ニューオリンズに上陸ですね」
ニューオリンズのハリケーンといえば、2005年に甚大な被害をもたらしたカトリーナが記憶に新しい。まさかあれほどの大災害にはならないと思うが、どんな事態になるか、想像がつかない。
「でも、上陸するのは夕方以降みたいです」
ヴィクスバーグは南北戦争の要衝のひとつで、川を下ってくる北軍を南軍が高台から見張った遺跡があるという。ミシシッピ川を見下ろす景色の撮影を楽しみにしていた。また、「ハイウェイ61カフェ」という歴史あるカフェも予定に入れていた。
しかし、のんびりしているとハリケーンの被害に遭いかねない。まっすぐ帰っても4時間はかかる。
「明日の予定は全部、キャンセル。朝7時半にヴィクスバーグを出て、昼前にニューオリンズに着くようにしよう」
旅先では安全第一だ。どうなるかわからないが、M編集長が夜、到着することになっている。勇気ある撤退を決断した。
閑散とした街で食料を調達
正午、ニューオリンズに到着。風が強くなり、時折、ざっと雨が叩きつける天候になった。雨雲の切れ端が飛んできているのだろう。食材を確保するためにスーパーに行ったが店は閉まっていた。あたりの飲食店や商店もすべてクローズ。街は閑散としている。
「まずいな。なんとか食料を手に入れないと」
ぼくたちが持っているのは、前日の「Doe’s Eat Place」のわずかな食べ残しだけだ。スマホの情報を頼りにスーパーをまわると、1軒のリカーショップがなんとか店を開けていた。何があるか分からないが、とりあえず入ってみた。
すると、店の奥にフライドチキンのデリがあった。それを買ってもいいのだが、持ち帰ってきたDoe’sの極上スープでチキンを煮たらおいしいのでは、と欲が出た。
「フライにする前の生のチキンを売ってくれない?」
店番の女性に聞くと、「店長に聞いて」という。原田さんが大手旅行代理店で培った英語力で黒人の店長に交渉すると、意外にもOKが出た。生の鶏肉、たまねぎ、パプリカ、冷凍ピザ、ワインをゲットして宿へと向かった。