高速から悪路までいなす「魔法の足まわり」に感激
今回は悪路を走行するメニューがたっぷりと盛り込まれていたので、試乗車にはアドバンスド・オール・テレインタイヤというオフロード走行に特化したタイヤが装着されていた。しかし、ケープタウン市内の舗装路を走っているときでもステアリングの手応えはしっかりとしていて、操舵時の遅れもまったくといっていいほど感じなかった。それと引き換えに、乗り心地はやや硬めだったものの、過酷なオフロード走行に備えるにはやむを得ない選択だったといえる。
ちなみに、日本市場ではこのアドバンスド・オールテレイン・タイヤはオプションでも選択できず、より一般的なオールテレイン・タイヤもしくはオールシーズン・タイヤが設定されるという。舗装路での乗り心地とハンドリングに関していえば、こちらのほうが格段に良好だろう。
ケープタウンから高速道路を北に進み、目指すオフロードを走り始める。硬く引き締まったダート路を、先導車に引きつられるまま「超高速域」で走り続ける。乾燥した地帯ゆえに砂煙がもうもうと舞い上がるが、そのなかをディフェンダー OCTAは力強く進んでいった。
デコボコ道でもタイヤが路面を捉え続けたのは、間違いなく6Dダイナミック・サスペンションのおかげ。しかも、車体が比較的フラットに保たれるため、猛スピードで走り続けても乗員の疲労度は最小限に留められる。私はこれまでにさまざまなSUVに試乗してきたが、こんな走りができるモデルは初めてだ。
インテリアからガタピシ音が聞こえることもなかった
さらには険しい岩場や砂漠のように柔らかい砂地でも試乗したが、ディフェンダー OCTAは一度もスタックすることなく、すべての行程を無事に走りきった。その圧倒的なオフロード性能は、クロスカントリー4WDとして長い伝統を誇るディフェンダーのフラッグシップモデルに相応しいものといえる。
そしてもうひとつ印象的だったのが、ディフェンダー OCTAの驚異的なタフさだった。今回の国際試乗会は2週間にわたって開催されたが、途中、一切のメンテナンスを行わなかったにもかかわらず、トラブルを起こしたことは皆無だったという。
しかも、悪路で散々酷使されていながら、インテリアからガタピシ音が聞こえることもなかった。よく、モノコックボディやエアサスペンションは高い耐久性や堅牢性の点でクロスカントリー4WDには相応しくないとされるが、ディフェンダーに限っては、そうした既成概念は一切通用しないように思えた。
ディフェンダー OCTAは限定生産モデルで、2025年モデルは合計220台が日本市場で販売されたが、2000万円を超える価格にもかかわらず、すでに完売の模様。ただし、ディフェンダー OCTAは2026年以降も設定される予定なので、ご興味をお持ちの方は辛抱強く待つことをお勧めする。