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走行257キロ! 奇跡の未登録車がオークションに登場…「怪物」の異名を持つアルファ ロメオ「SZ」が約1680万円で落札されました

10万3500ユーロ(邦貨換算約1680万円)で落札されたアルファ ロメオ「SZ」(C)Bonhams

走行距離257キロ! 新車同様のアルファ ロメオ SZがオークションに登場

2025年2月、ボナムズ・オークション社がパリ「レトロモビル」に付随して開催した大規模オークション「LES GRANDES MARQUES DU MONDE À PARIS(パリに集う世界の偉大なブランドたち)」でも、数多くのヤングタイマーの姿が見られたようです。今回はそのなかから、1990年代の伝説的スポーツカーであるアルファ ロメオ「SZ」をピックアップ。そのモデル概要と、注目のオークション結果についてお伝えします。

アルファ ロメオの正統性を証明するために開発された“イル・モストロ”とは?

時は1980年代中盤、長年のライバルであったフィアット・グループによって買収されたアルファ ロメオは、その純血性をアピールするためのイメージリーダーを必要としていた。そこで誕生したのが、1989年パリ・サロンのワールドプレミアにて全世界に衝撃を与え、誕生から36年が経過した今もなお色あせないアルファ ロメオ「SZ」(社内コードES30)である。

車名SZの「Z」は、1958年にデビューした伝説の「ジュリエッタSZ(スプリント ザガート)」と同じく、カロッツェリア「ザガート」の頭文字だった。

しかしボディのデザインワークは、この時期フィアット・グループの「チェントロスティーレ(デザインセンター)」に所属していたロベール・オプロンとアントニオ・カステッラーナが手がけ、ザガートはボディ/インテリアのコーチワークのみを担当。しかし、その奇怪かつ魅力的なスタイリングから「イル・モストロ(Il Mostro:怪物)」のふたつ名で呼ばれることになるとともに、この時代におけるザガートの代表作のひとつと見なされている。

当時最高の「サウンドトラック」と称賛された

でもSZの真価は、外見よりも中身にあったというべきだろう。トランスアクスル式FRレイアウトや後輪にド・ディオン・アクスルを採用するなど、もともとは1972年発表の「アルフェッタ」に端を発する高度なメカニズムがもたらしたスーパーハンドリングこそが、このクルマのキャラクターを決定づけていたのだ。さらにサスペンションのチューニングは、アルファ ロメオ社内のレーシング部門スタッフが、フロアパンを共有する「アルファ75」のレーシングバージョン「75 IMSA」の経験を生かして行ったといわれている。

また「アルファ75 アメリカ」用をベースとしつつも、専用チューンをくわえたことで210psを発生する3LのV型6気筒SOHCエンジンを搭載し、その快音から当時最高の「サウンドトラック」と称賛された。

そして公道用ストラダーレとしてのみならず、1990年代前半に人気を集めた「イタリア・スーパーカーGT選手権」小排気量クラスでも大活躍し、アルファ ロメオの伝説に連なる名作となったのである。

オランダのアルファ ロメオ蒐集家のコレクションから出品

このほどボナムズ「LES GRANDES MARQUES DU MONDE À PARIS 2025」オークションに出品されたアルファ ロメオ SZクーペは、総計1036台が製作されたと言われるうちの1台。このモデルのデフォルトである、「ロッソ・アルファ」に「ベイジェ」のレザーインテリアの組み合わせで仕上げられている。

オランダに新車として納車されたこのクーペは、生涯アルファ ロメオを愛し続けた、さるエンスージアストの手に渡り、彼のコレクションから出品された3台(ジュリエッタSSと1900スプリント、ジュリエッタ・スパイダー)を含む、素晴らしいアルファ ロメオのラインアップに加わった。

歴代でただひとりのオーナーは、このSZにしかるべき整備を施しつつも、実際に道路を走らせるつもりはなかったとのこと。そのため今なお未登録のままでありながらも、重要なオランダの型式認証は取得している。オークション公式カタログ作成時点の走行距離はわずか257kmにすぎず、この伝説的な「イル・モストロ」のなかでも、もっともローマイレージの個体のひとつに違いあるまい。

また、今回のオークション出品に際しては、前述したオランダ国内の型式認証書やサービスブックとマニュアルが入ったアルファ ロメオ純正レザーポーチ、ワークショップマニュアルとスペアパーツカタログ、室内用カーカバーとレザーバッグが付属する。

控えめにも映るエスティメートだったが……

この新車同様のアルファ ロメオ SZについて、ボナムズは自社のオークション公式カタログ内で「アルファロメオ蒐集家のマストアイテム」と讃えるとともに、7万ドル~10万ドル(邦貨換算約1120万円〜1600万円)という、昨今のこのモデルとしては控えめにも映るエスティメート(推定落札価格)を設定。さらにこの出品ロットについては「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」で行うことを決定した。

この「リザーヴなし」という出品スタイルは、金額の多寡を問わず確実に落札されることから会場の購買意欲が盛り上がり、エスティメートを超える勢いでビッド(入札)が進むこともあるのがメリット。しかしそのいっぽうで、たとえ出品者の意にそぐわない安値であっても落札されてしまう不可避的なリスクもある。
はたして、2月6日に行われた競売ではリスクを冒した甲斐あって、エスティメート上限を超える10万3500ユーロ。現在のレートで日本円に換算すると約1680万円で落札されることになったのだ。

ちなみにちょうど1年前、2024年のレトロモビルに際して行われたRMサザビーズ「PARIS 2024」オークションでも、同じくアルファ ロメオ SZが出品され、6万9000ユーロで落札された実績がある。でも、こちらは今回出品されたSZよりもはるかに走行距離が多く、コンディションもそのマイレージを物語るものだったという。

したがって、今回の出品車両は人気のアルファ ロメオ ES30系 SZのなかでも、ハイエンドに属する1台と判定されたということになろう。

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