ケイジャンの文化を残すルイジアナ州ラファイエットへ
2024年の8月末から、アメリカをミシシッピ川沿いに南北縦断して音楽の歴史をたどる旅に出ることにした筆者。ニューオリンズでダッジ「デュランゴ」をレンタルしてBBキングにちなみ“ルシール号”と命名し、ブルースの故郷である「ミシシッピ・デルタ」を巡ります。再度ニューオリンズに来て4人目のメンバーを迎え、クレオールとケイジャンという、米国南部のカルチャーに触れました。
大陸を横断するインターステート10
9月14日朝、ぼくたち4人はルイジアナ州西部のラファイエットへと向かった。荷物は多い。4つのトランクにぼくと原田さんのハイキング用バックパック、さらには宮澤カメラマンのカメラバッグ、食料品を入れた保冷バッグ、水1ケース、ビール1ケース、そして4人の乗員である。しかし、“ルシール号”ことダッジ「デュランゴ」は余裕しゃくしゃくだ。さすがはアメリカ製フルサイズSUV、荷室はかなり広い。
ニューオリンズからラファイエットまではインターステート10を西へ230km、約2時間半のドライブとなった。カリフォルニアにくわしい人は、インターステート10に馴染みがあるだろう。LAを西の起点とするインターステート10は、フェニックス(アリゾナ)、エルパソ(テキサス)、ヒューストン(テキサス)、ニューオリンズ(ルイジアナ)を通って、フロリダ州ジャクソンヴィルで大西洋に到達する。南西部、南部にとって重要な大陸横断道だ。
インターステート10を走っていると、途中にバトン・ルージュという大きな街を通過した。ここは大きな港湾都市で、ミシシッピ川の海運の中心として知られる。ニューオリンズには小さな観光船が着く程度の港しかない。19世紀初頭以来、ルイジアナの商業を担ってきたのはバトン・ルージュなのだ。
リビング・ヒストリーを展示するミュージアム
午前11時、ラファイエットに到着。まずは、歴史あるケイジャンの部落が保存されたミュージアム「ヴァーミリオンヴィル」を訪ねた。カナダのアカディア地方に入植したフランス人が、イギリス人に追われてルイジアナに流れ着いたのは1755年。彼らは「アカディアから来た人」という意味で、アカディアンと呼ばれた。しかし、ニューオリンズにはプライドの高いクレオールの社会があった。アカディアンたちは未開のラファイエットに入り、迫害よりも独自の文化を守る道を選んだ。
「ケイジャン」とは、入植から100年以上経った19世紀後半、アカディアンがクレオールやスペイン人などと結婚するようになって生まれた人たちを指す。
ヴァーミリオンヴィルは「リビング・ヒストリー」を看板にするだけあって、古い民家や生活の様子、学校など、リアルな展示が充実。18世紀から質素な暮らしで文化を守ってきた歴史を学ぶことができた。
幸運にも土曜日だったので、地元の人たちの音楽集会も見学できた。20人ほどがアコーディオン、ギター、フィドルなどを持ち寄り、伝統音楽を演奏していた。ニューオリンズのジャズとはまったく異なる素朴な民族音楽で、フォークダンスを行うのが定番だそうだ。なお、ザディコというジャンルは、20世紀になって黒人たちがケイジャン・ミュージックをアレンジして生み出した音楽だ。
その日は居心地のいいAirbnbに宿泊。オーナー推薦のレストランでケイジャン料理のディナーに舌鼓を打った。なお、ワニ肉はすべて天然もので、フライはなかなかの珍味。聞くところによると秋が旬だそうだ。