「街の遊撃手」誕生前の初代ジェミニは後輪駆動
1974年に登場したいすゞ初代「ジェミニ」は、オペル「カデット」をベースにした世界戦略車で、日本では「ベレット」の後継として登場しました。1979年のモデルチェンジで、走行性能を重視した「ZZシリーズ」も追加され、FR車として密かに支持されました。今回は、この愛車を20年以上所有している「ジェミ吉」さんに、初代ジェミニへの思いを伺いました。
ドリフトを楽しむために手に入れた初代PF60型
「私はドリフトブーム世代なので、福岡出身の元D1ドライバー、“のむけん”さんが現役で走っていた時代にギャラリーとして遊びに行っていました。自分もやってみたいという思いが強くなり、車両を探した結果、たどり着いたのがPF60型ジェミニだったのです」
まだ大学生だったという“ジェミ吉”さん。手持ちの予算は少ないため、人気の日産5代目13型「シルビア」は買えない。さらに、人と同じクルマに乗りたくない性格だったため、人気のハチロク(AE86)系も却下。ホットハッチの代名詞だったトヨタ2代目「スターレット」も考えたが、良縁に恵まれそうだったものの最終的にはキャンセル。そんな矢先、たまたま売りに出されたのが初代PF60型ジェミニだったのだ。
当時は峠のPF60型ジェミニ仲間が存在
当時、PF60型ジェミニで峠を走っているユーザーが何人か存在していたそうだ。不人気車のため基本的に社外品は無く、あったとしても若かりし“ジェミ吉”さんには手が届かなかった。購入した車両は、足まわりが変更されていた個体で、マフラーやエキゾーストパイプなどは解体屋でパーツを探し、装着して走り回っていたそうだ。
「当時、峠で遊ぶためには、同じ車種に乗る仲間の存在がとても大切でした。何かトラブルがあっても、その仲間たちが助けてくれるからです。たしか、3〜4台はPF60型のユーザーがいたんですよ。だから私は降りることなく、このクルマに乗り続けていたんです。」
しかし、周りの仲間たちは次第に走り屋を卒業。そうなると、必然的にPF60仲間もいなくなり、気がつけば“ジェミ吉”さんひとりだけになってしまった。